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正常な世界にて

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 また、自分の将来だけでなく、社会のそれも不安になっていく日々が、相変わらず流れ続けている。川の流れで例えるなら、濁った泥水が、勢いを衰えさせることなく、ひたすら川を下り続けているような様だ。
 発達障害者への福祉や支援が拡充するにしたがって、一般の人々からの風当たりが強くなっていく気がするのだ。歩いていて投石されるレベルではないとはいえ、陰湿さと妬みを感じるのだ。うまくまとめると、『俺たちも不幸なのに、なんで障害者ばかり優遇するのか?』という反感だ……。その矛先は政府だけでなく、私たち当事者にも当然向けられる。ネット上でキツイ言葉を見かける度に、自然と悲しみが湧いてくる。つい反論したくなるけど、なんとか耐え続けている私。反論をしてもエスカレートするだけだと、自分に言い聞かせているのだ。

 ……しかし、その反感という攻撃に我慢できず、報復へ移る当事者も当然いた。彼らは、街角で堂々と「障害者への逆差別をやめろ」とか叫ぶ連中を、生物的に黙らせていった。幸い、喫茶店で起きたアレ以来は、惨劇の目撃者にはならずにすんでいる。
『壇上に上がってきた男が、火炎瓶を演壇に投げつけ、講演中の川村議員を全焼させました』
『暗星大学の教授が、学生を装っていた女に刺されて死にました』
自分と同じ発達障害者が、誰かを殺したりすると、罪悪感っぽい感情を抱かずにはいられない。私の気が弱いだけかもしれないけど、他人事とは思えないのだ。
 自分がもし、こみ上げる怒りに耐え切れずに、ということを考え出しちゃうと、なかなか眠れなくなる。自分自身が怖くなるほどだよ……。
 私が人殺しをしてしまえば、坂本君と高山さんは悲しむかな? ひょっとしたら、坂本君はねぎらいの言葉を送り、高山さんは賞賛の声を上げてくれるかもしれない。なにせ、自分たちが憎まずにはいられない人を殺したわけだから……。おまけに、世界の潮流から考えると、政府やマスコミは、私を寛大に扱ってくれる可能性が高いね。


 ううっ、頭の中がグルングルンと大混雑だ。気持ち悪い……。深く複雑に考えすぎてしまったせいだね。しかし、嫌でも考え始めてしまうんだよ……。パソコンのデータのように、簡単に記憶を消せたりロックできれば、どれほど嬉しいことだろう。人間の脳は高性能らしいけど、融通が利かないからとても信じられない。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん