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正常な世界にて

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【第11章】



 最近、世間で起きることすべてが、自分に関係しているように思えてくる。冷静に考えれば無関係なことまでもだ……。

『国連総会にて、出生前診断を全面的に禁止する『コーンウォール条約』が採択されました。すべての常任理事国や日本をはじめとする多くの国々が、この条約を批准します』
世界中の国々が、ある方向へと突き進んでいく。この条約の内容自体は、悪い内容ではない。発達障害者である私からしても、賛成できる内容だ。
 ……けど、なぜか不気味な感じがしてしまうのだ。まあ、私の性格がひねくれているせいかもしれないけどね。

『安全保障理事会は、コーンウォール条約を批准しないドイツに対し、非難する声明を発しました』
『アメリカの次期大統領候補であるパットン氏は、コーンウォール条約を批准しないすべての国々に、武力による制裁を加えるべきだと主張しました』
これでも正常運転かもしれないけど、世界は不穏な雰囲気に包まれていた。とはいえ、日本は多数派にいるから、一方的に空爆されたりする心配はない。他人事だと思えば、少しは気が楽になる。

 ただ、国内は国内で、同じような流れが起きていた。私の耳は自然と、情報収集のために傾く。
『政府は、少子高齢化対策や貧困対策の一環として、障害者の結婚や出産を奨励することを発表しました』
これからの私にとっては、大事なことだ。もちろんできればの話だけどね。どんな支援であれ、希望は湧いてくる。
 とはいえこの潮流を、私は浮き足立って大喜びすることはできなかった……。
 本で得た知識に過ぎないけど、脳が関係する発達障害などは、子供に遺伝してしまいがちだという……。それを考えると、私は子供を産んでいいものかと思ってしまう。もし見事に遺伝してしまえば、自分自身が受けている苦しみを、子供にも受けされてしまうことになる……。
 また、自分の発達障害のせいで、夫に迷惑をかけてばかりになるかもしれない。迷惑とまでいかないとしても、息苦しい共同生活になることは不可避だろうね……。ただ、当事者同士の結婚なら、少しは気が楽かもしれない。
 すると、坂本君を第一目標とするべきかな? まあ坂本君のことだから、私よりも可愛い発達障害者の女の子がいれば、そっちにいってしまうかもしれない。そうなったら、すごく悲しいことだ……。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん