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正常な世界にて

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「木橋君は病院で死亡が確認されたよ。まあ素人目にも一目瞭然だったけど」
高山さんが話し始めた。落ち着いた口調かつ表情だけど、ついあのときの彼女を思い出してしまう。きっとアレは、精神病質による症状なんだろうと、自分をそう納得させた。
「私と坂本君、近くにいた子は先生から聞き取りされたよ。……私は、何もしていませんと答えた」
高山さんがそう言うと、坂本君は「ボクも」と言った。
「可哀想だけど、不幸な事故と思うしかないよ」
彼はそう言葉を続けた。
「森村さんが聞き取りされるとしたら、明日だと思う。今日はもう遅いし、気絶した人間に聞くなんて不味いからね」
彼女はそう言った。はあ、聞き取りか。明日が億劫だ。

 ふと、窓へ視線を移す。ここ一ヶ月で一番鮮やかな夕焼け空だ。間違いなくそう。
 午後の授業を休む形で、保健室でずっと寝ていたらしい。
「授業のことなら心配しないで。ボクに任せてよ! 一字一句手取り足取り教えてあげるよ!」
「お断りします!」
坂本君の下心丸出しの申し出を瞬殺してやった。こんなセリフで、何人の女子の心を乱したことやら。ノートは無論、高山さんに写させてもらう。


 帰路につく私たち。グラウンドのあちらこちらで、複数の運動部が練習していた。輝く夕陽が、彼らの首元を薄いオレンジ色に染め上げている。
「そういえば、サッカー部は休みなの?」
「ウウン、森村さんのために休んだよ!」
「ええっ、それはありがとう」
驚きながらも嬉しくなった私。
「本当はサボりたかっただけじゃないの? 森村さんにイイ顔できるし一石二鳥じゃない?」
高山さんがにやけながら言う。坂本君は首を激しく横に振るが、目元が笑っていた。

作品名:正常な世界にて 作家名:やまさん