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最後の孤島 第3話 『煙にまかれて』

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【倉野 比奈】(4)



 アンさんは、杖をダニエルに向けると、不思議な言葉を呟き始めた。何語なのかは、さっぱりわからない。

 呟き始めるとすぐに、アンさんの杖が光り輝く……。水色っぽい、神秘的な光だ。まるで妖精のような光り方を見せてくれる。
 これは、ゲームやアニメでよく見かける、魔術そのものだった……。これは夢ではない。
 私は、心の底から驚くしかなかった。周囲の人々は、少しも驚いていない。人々が、彼女なら助けられると言っていた理由がわかった。

 それから1分ぐらい経つと、彼女の杖から、光が失われ始めた。そして、光は完全に消え失せる。どうやら、魔術が終わったらしい。
「う、う〜ん?」
魔術が終わるのを待っていたかのごとく、ダニエルが目を覚ました!
「あっ、ヒナ! あの売人はどうした? オレはなんで、神殿にいるんだ?」
周囲をキョロキョロ見回す彼。まだ少し頭がぼんやりしているようだが、いつもの彼だった!

 私は、アンさんや島の人々がいることなど忘れて、ダニエルに抱きつく! もう二度と、彼が無茶な行動をするのを許さないつもりだ!
 抱きつかれた彼は、立派な赤面を浮かべていた。ショックで、ジョークを飛ばすことなどできないだろう。

 やるべきことを何か忘れている気がするが、今はどうでもいい! さらに強く、彼を抱きしめる。