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それが家門なら

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5 押してダメなら



(1)

通りかかった
バス停で

足痛がって
バス乗り損ねて
うずくまるのに
出くわして
車に乗れと
促した

いくら僕でも
手負いの敵に
助けの手ぐらい
差し伸べる
その程度の
常識はある

よしんば車に
乗せたからって
後々
恩に着せるほど
了見狭くは
出来てない

単なる
休戦提案だった

だけど君には
僕のしがない
男気も
うさん臭くて
怪しい甘言

つかまれと
差し出した手を
ふりはらい

道端で
しかも車道で
頑として
拒絶するから
頭にも来て

お好きにどうぞと
へそ曲げて
手を引っ込めて
退散したけど

ぽつねんと
バス待ちながら
時おり顔を
ゆがめる君を

バックミラーに
残していくのは
さすがの僕も
気が引けた

(2)

僕の顔見りゃ
疑うか
怪しむか

2つに1つと
心に決めてる
人並外れて
お堅い女に

素直に言うこと
聞かせたかったら
頭と口は
使いよう

筋金入りの
利かん気で
人の道に
外れることを
死んでも嫌がる
その性分

逆手にとれば
効果てきめん
経験則は
裏切らない

押してダメなら
何とやら だろ?

お袋の
家庭教師の
行き帰り

送り迎えを
固辞する君が
助手席に
すんなり乗った

-親切は
ありがたく
受け取ってこそ
人の道
やみくもに
断わるなんて
礼儀知らず-と
説いただけ
埒もなかった

乗ったら乗ったで
案の定
「駅で降りる」
「家まで送る」の
押し問答には
閉口したけど

天気も
時間も
周りの視線も
気にしなくてすむ
車の中は

毎度毎度の
道中が
口げんかには
格好の場で

運転手には
週3度でも
飽き足りなかった

内気な君が
尻込みすること
請け合いの
にぎやかな場に

ある日
是非とも
引っ張り出したい
欲が出て

「いっしょに
来るなら
あの理不尽な
商売1件
あきらめる

嫌だと言えば
気の毒だけど
明日また
脅しに行くまで」

人助けを
ちらつかせたら
しぶしぶながら
同意した

やり口が
汚すぎると
君の目は
睨んでたけど
痛くもかゆくも
あるもんか

君なんか
死ぬまで一生
行きそうにない
悪友どもの
パーティーに

かくして
“汚いやり口”で
ご同行の
栄に浴した

(3)

場の雰囲気とは
よく言ったもの

司会の指名と
囃す拍手に
気おされて

慣れない舞台に
押し出されたのが
義理堅い君の
運のつき

両手でマイクを
握りしめ
恥ずかしそうに
歌う姿は

少々意外で
微笑ましくて

出だしの3語で
会場じゅうが
虜になった
絶品すぎる
君の音痴は

想像の
域を超えてて
微笑ましくて

目も耳も
吸い寄せられた

徹頭徹尾
君の姿に
釘づけで

場のさざめきも
うすら笑いも
聞こえなかった

舞台に1人で
放っておくのが
不憫でもあり

いじらしい
孤軍奮闘
いつまでも
見ていたくもあり

どっちつかずで
釘づけだった

微笑ましさの域なんか
とっくの昔に
通り越してた

作品名:それが家門なら 作家名:懐拳