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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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 ジェニーは小切手を取り出した。ここは豊かな胸の谷間から出して欲しかったのだが常識的にバックから取り出された。だがしかし、ちょっとした仕草だけでも十分に色っぽい。ほくほく。
金額を見て少々驚いた。
 300万だ。
「依頼内容は松岡の調査だけでいいのか?」
 切り替えたわけではないのだが、俺の声はビジネスモードになっていた。ジェニーの表情もそうだった。この人も完全にカタギってわけじゃない。
「状況の解決。どういう結果になろうとあなたの判断に任せるそうよ」
 どういう結果になろうと解決か……
「これは兄貴からの依頼か?」
 俺はさらに声と視線を鋭くした。しかしジェニーは全く怯まない。
「お父様の許可も取っている。お父様の依頼と考えていいわ」
 親父…… 俺の親父の名の重さを彼女は知っているんだろうか。
 それにしても親父が自分の片腕の事を俺に任せるだろうか。
全て放り出して家を出た俺などに。
 即答しない俺の胸のうちをまたジェニーは見透かした。上目遣いで俺の表情を覗き込んだ。
「お父様があなたをはめようとしている。って考えてる?」
「親父が俺を信用しているとは思えない」
 ジェニーは優しく笑った。
「お父さんを信用できないんじゃなくて、自分が信じられないのね。自分が頼られるほどの人間じゃないって」
「そういう事じゃないが」
 ではどういう事だろう。図星じゃないか。
「お父様はあなたを厳しく評価したんでしょうね。でも父親が息子を低く評価するなんて当たり前じゃなくて? それに、松岡さんはあなたを頼って電話してきた。少なくともあなたはお父様の片腕には信頼された人間。しかも松岡さんはあなたの師匠。師匠に頼られる弟子はそうはいないと思うわ」
 女のおだてなど話半分で聴くことにしているが…… 松岡には借りがある。瀬里奈も気にならんわけではない。
 俺は小切手を懐にしまった。
「わかった。学校の手配を頼む」
「よい仕事を期待してるわ、社長」
 あと…… 聞いておかずばなるまい。
「もうひとつ…… この店を指定した理由は?」
 ジェニーはあっけらかんと答えた。
「映画で見て一度来てみたかったのよねー」
 やれやれ、兄貴と来ればいいじゃねーか。
 ジェニーはウインクして席を立とうとした。俺はそれを引き止める。
「ところで後ろのお兄さん達だが」
「ん?」
 さすがだ。振り返らずコンパクトを出し「どこどこー」と化粧を直す振りをして後方を確認した。
「どう見てもナンパしようって連中じゃない」
「あらぁ、人を見かけで判断しちゃかわいそうよ」
 ジェニーは笑ったが本心でないのは明らかだ。声が優しいお姉さんから…… 戦士に代わっていた。
 彼女がやってきて1分ほどで少し離れた辺りにスーツにサングラスといういでたちの男達が現れていた。
三人。一人は店から見える道端に。二人はもう少し離れた路地の辺り。一目でカタギではない雰囲気。時折ちらりとこちらを見ては何かつぶやいている。恐らく小型通信機で連絡しあっているんだろう。
 道端の奴の口元は見える。得意ではないが読唇術も一応習った。松岡直伝だ。
 シランヤツダ、ウワキアイテカ。ガキダ。…… シカケルカ。…… ワカッタ、マツ。
仕掛けてくるのは店を出た後か。俺と別れるのを待つのか。
「3人」
 ジェニーの瞳が冷たくなった。俺は笑って頷く。
「あんたを狙ってきてるぜ。今回の件に関係ありそうか?」
 ジェニーは首を振る。
「どうかな。最近あの人他所の組織と揉めてるから。私を捕まえてクナイトの弱みを握りたいってとこじゃない?」
 怖くないんだろうか、いい度胸だ。まぁでもなきゃ兄貴とは付き合えないか。
「連中を退治した場合はいくらになる?」
「ここは私が払うわー」
 ジェニーはレシートを取るとひょいと立ち上がった。
 やっすいなー。
「右の二人お願い。道端のは引き受けるわ」
 しかたねぇ、兄貴に恩売っとくのも悪くないか。
 俺は会計に向かう美人さんに「ごちー」と手を振り、軽いステップで店を出た。鼻歌を歌いながら男達のいる方へ進む。
 視線を向けず奴らを確認する。道路からこっちを見張っていた奴がささやいている。それに呼応して少し離れたところにいた二人が向かってきた。左肩が少し下がっている。銃を持ってやがるな。
 何食わぬ顔ですれ違う。3mほど離れたところで俺は言った。
「女相手に三人がかりか?」
 ビクンと二人の肩が動き、懐の銃を引き抜きつつ振り返る。
 だが俺はもうそこにいなかった。
 横っ飛びして極限まで腰を落とす。奴らの視界から一瞬消えていた。右手にはすでに愛銃ベレッタが握られている。
 白昼堂々いきなり銃を抜く奴らに容赦は必要ない。
 2連射。二人はサングラスを弾き飛ばされながらその場に崩れた。
 銃声に気づき店を監視していた奴が振り返った。俺の銃口はすでに奴に向けられていた。だが引き金を引く必要は無かった。
 ふわっと風のように金色の髪をなびかせてジェニーが突っ込んできていた。男が気づく前にわき腹に膝蹴りを叩き込む。思わずよろけた男の頭をつかんで再度腹に膝蹴り。前のめりにうずくまろうとしたところへクルリと回転してエルボーが放たれる。そいつはこめかみに打ち込まれ男は白目をむいて悶絶した。
 女性のパワーの無さを補うスピードと急所への正確な攻撃。一朝一夕で身につく技ではない。
 さすが…… あの兄貴が惚れる女だ。
 他に敵がいないかを慎重に確認した後、ジェニーに駆け寄る。朝の散歩から帰ってきたようなケロッとした顔で微笑んでくれた。
「お見事、鮮やかなものね」
「こっちの台詞だ。尋問するか?」
 のびている男を指差したがジェニーは舌を出し走り出した。
「冗談、後は任せるわ。警察とお友達なんでしょー」
 人聞きの悪いことを。署長と受付嬢が知り合いなだけだ。
 止めるまもなく美しい後姿は路地の向こうへ消えていった。名残惜しい気はしたが兄貴と喧嘩したくも無い。
 店に声をかけ警察を呼ぶように伝える。また事情聴取されなきゃならんな。
 俺は舌打ちしたが、先ほどのサノバビ・カップルがだらしなく腰を抜かしているのを見つけ少し機嫌を直していた。

 驚いた事に翌日には入学手続きが済んだ旨がメールされてきた。どんだけ裏工作が得意なんだ兄貴。
 昨日あの後警察に行きジェニーを襲った連中の話を聞いたが親父の敵対勢力の三下であるらしい。三郎が当たっていた情報屋の見解も一致したのでほぼ間違いは無い。松岡とは無関係だろう。兄貴に報告はしておいたので奴らの親玉は長いこと無いだろう。クナイト・バーンを敵に回して生きていられるやつはこの辺りにはいないのだ。
 物騒な話は俺の周りだけでなく警察署長エバンス氏、通称シェリフも最近の治安悪化にぼやいていた。
 麻薬犯罪の低年齢化が進んでいるらしい。
「若いうちから薬に逃げてて将来どうするんだ?」
俺に言われても困るんだが…… くそ真面目で優秀な警官なのだが時折俺に愚痴をこぼすのが玉に瑕だ。
と、この時はそう思った。