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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN2 ピース学園

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「なんにせよ情報不足だ。明日から情報収集しよう。ジムはここで松岡からの連絡を待ちつつネットで情報を。三郎は情報屋と裏の噂集めを頼む」
 三郎は冷めた声で「ああ」と言った後質問した。
「依頼人は松岡氏という事になるだろうが、商談もしないで動いていいのか? 金が入らなかったらどうする」
 奴の言いたい事は非常にわかる。やな奴。
「俺が払えばいいんだろ」
 俺の返答に三郎はニヤリともせず二度うなずいた。
「そういう事だ。俺達はプロだからな。で、お前は何する」
 考えは決まっていたが気は重い。ため息交じりに答えた。
「俺は兄貴の線から親父の組織内を探る」
 なにしろ…… 捨ててきた実家だからな。

 夜が明けた。
 兄貴クナイト・バーンには夜のうちにメールを送っておいた。朝には返事が返っていて会ってくれるということだった。
 わが社に来てくれればいいのに、わざわざ昼飯時にラギエン通りの海よりにあるオープンカフェに呼び出された。
 初夏のデートでなら最高のロケーションだが兄弟が落ち合うところではないのは理解していただけるだろう。Dクマ前のフードコートでいいじゃんかよ。映画の撮影にもよく使われるおしゃれなカフェに一人座りアイスコーヒーをチューチューしながら、時折通る珍しいスポーツカーに感嘆しつつ待つこと30分。
寂しすぎる状況。おぼえてろよ兄貴。
周りのテーブルは当然おしゃれにランチを楽しむカップルたちだ。こちらを見てくすくす笑う女もいる。すっぽかされたのよ、と俺に聞こえるように彼氏にささやいていた。南口のラーメン屋、街一番の情報屋にアクセスしてやつらの自宅を割り出してやろうかとスマホを取り出した時、待ち人はやってきた。
「ごめーん、まったぁ?」
 涼しげな声と共に予想外の人物が現れた。
 言うまでもないが兄貴ではない。
 光が歩いてきた。そう表現するのが最も適切だろう。
 それほど美しい人だった。
 プラチナブロンドの長い髪が、日の光を浴び透き通っているように見えた。薄い唇が笑みを作り、知性を感じさせる青い瞳が俺を見つめていた。
 ライトグレーのパンツスタイルのスーツ、清潔感のあるシンプルな白いブラウスが見事なプロポーションのボディをつつんでいる。
 たじろぐほどの美貌と爽やかな色気を漂わす圧倒的な美女。それが何故か俺の前にやってきた。
「久しぶり風見君」
 テンプレートな挨拶と共に優雅に俺の前に座る。その辺でやっと俺は彼女の美の呪縛から解かれた。がんばったほうだ。さっきのサノバビッチカップルなんざ未だぽかんと口をあけてやがる。他の席の連中も同様だ。俺は何故か優越感を感じつつ切り出した。
「ジェニー、なんであんたが?」
「あら、私じゃ不満?」
 いたずらっぽくウインクする。全く下品でない色っぽさ。10代の私には刺激的過ぎまする。
でも負けないぞ。
「ランチの相手としては申し分ないさ。だけど今は美人とお茶している場合じゃないんだ。兄貴の話を聞きたい」
「大丈夫、話は聞いてるわ。彼今忙しくて中々出歩けないのよ。で、あなたからメールが来たとき困った顔してたから私が代りに行くわよって言ってあげたわけ」
 ジェニーはウエイトレスに紅茶を注文した。細く長い指でメニューを指差す。それだけで絵になる。ウエイターだったら仕事どころではなかっただろう。いや、この子もなんか頬を赤らめている。それほどの美だ。
「うちの内情まで知ってるのか?」
「家に帰らないあなたよりはね。松岡さんの揉め事でしょ? クナイトに詳しく聞いてきたわよ」
 ならいいか。彼女ジェニー・フラントは3年位前から実家に出入りしている。まぁ兄貴の恋人だ。美人で頭がいい上、明るく社交的な性格なため親父にも気に入られている。家族も同然なんだろう。
 ……ん?
「俺のメールが着いた時、兄貴と一緒にいたのか?」
「うん」
「あんな夜中に?」
「うふ」
 ジェニーはニコニコと笑いながら俺の言葉を待った。
が、俺が言葉をつげなかったのでズバッと言った。
「早く彼女作りな」
 うるせーよ。
 俺はこういう時の打開策を知っている。伊達に社長職を務めているわけではない。
 こういう時は勿論、無視して話題を変える…… だ。
「松岡は今連絡がつかない…… そうだな?」
「そうね、結構大騒ぎになってるわ」
 ジェニーは少し肩をすくめた。大きなバストがつられて持ち上がる。うむむむ。
「松岡はまだ組織の金を管理しているのか?」
「そこまでは知らないけど重要な地位にいたのは間違いないわ。お父さんも信頼なさっていたし」
 ふーむ、問題が発生しそうな感じではない。となると部外者の線が大きい。
「敵対勢力に襲われた可能性は?」
 ジェニーはその質問に苦笑した。
「そりゃお父さんたちの仕事を考えれば無くは無いでしょ。でも私は違うと思うわ」
 ジェニーの感は鋭い。しかし根拠が無ければ信用するわけにはいかない。彼女もそれを感じ取ったようだ。話が早くて助かる。
「仮に松岡さんが敵に危害を加えられたとしたら、お父さんやクナイトどうすると思う?」
「ただじゃすまさないだろうね」
 親父は極悪非道と言っていい地獄に落ちるべき人間だが同時に情も厚く仲間意識も強い。一番の相棒に手出しする者があればあらゆる手段を使って相手を八つ裂きにするだろう。
「物騒な雰囲気というよりは身内で内々に済まそうって慌しさなのよ。どう考えても違うでしょ?」
 たしかに…… しかし兄貴はともかく親父の性格まで把握しているとは、さすがに兄貴の女だ。美貌だけが武器じゃない。紅茶が到着してジェニーは何もいれず香りを楽しんだ後、一口味わってから続けた。アールグレイの香しさは俺にまで届いていた。
「松岡が失踪しているって事は娘は? 瀬里奈って言ったな」
 瀬里奈を助けてくれ。松岡からそう依頼があった事は兄貴にも伏せた。夜中突然松岡から切羽詰った電話があったとしか言っていない。しかしジェニーはいたずらっぽく笑い俺の顔を覗き込んだ。
「忘れた振りして…… そっちの方が心配なんでしょ」
 完全に向こうのペースだ。ため息をつかざるを得ない。
「瀬里奈の事まで知ってるのかよ」
 ジェニーはふふっと笑って紅茶をまた一口飲む。幸せそうな顔をしてから言った。
「言ったでしょ詳しく聞いてきたって。それに松岡さんからも度々あなたとお嬢さんの話聞かされてたしね」
 頭のいいおねーさんとの会話はトントン進んで好ましいが、どうにもイニシアチブが取れない。
「あなたのフィアンセは無事よ。この街にあるピース学園の寮生。お父さんが失踪した事も伝えていないわ」
 ピンフか…… ここから何キロも離れていない。
「松岡さんの行方が知れない以上、手がかりはお嬢さんしかないわ」
 俺の知る限りでは… な。
「ピース学園への臨時入学の手配を取れるわ。潜入調査って奴ね」
「まぁ待て」
 何か踊らされているような気がする。
「俺は松岡の事がちょいと気になっただけだ。そこまで手間かけて調べるつもりは無い」
 一歩引いた俺にジェニーは尚もおねーさま笑いを絶やさない。
「何も駆け引きする必要なんてないのよ。あなたはプロとして仕事をこなせばいい。正式な仕事として依頼するわ」