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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

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 やっと食いつける話題が出たのでジュンが口を開いた。突然瞳が輝いている。ったく女ってのは。
「少なくとも女の子連れてるのは初めて見たわね。あ、つぶやいとかなきゃ」
 アリスは胸の谷間からスマホを取り出すとせっせこツイッターを始めやがった。
「んなこと後でいいから仕事しろよ、受付嬢」
「失礼ね、ちゃんと受付に座ってるじゃない」
 顔も上げやしねぇ。
「客が来てんだから応対しろよ! 来いっつーからわざわざ来てやったんだぞ!」
 アリスはわざとらしく「ああ」と言った。
「呼んだのは署長に決まってるでしょ」
「俺が知りたいのは署長の居場所と今あいているかだ」
「あら、あたしの週末があいてるかは知りたくないの」
 えーと。
「一応聞いておこうじゃないか」
「残念、あたしは週末ネットゲーム三昧です」
 殴るぞ、この野郎。
「ゲームもいいけどね、合コンとかデートとかしたらいかがですか、おねーさん」
 それでも笑顔で返した俺は紳士。
「あら、あたしもてるのよ」
 アリスは少し鼻高々になった。
「あたしの弓の腕前はサーバーじゃちょっとは知られてるのよー。一緒に狩りませんかってログインしたとたんにお誘いの嵐よ」
 えー、専門用語ばっかりで申し訳ありません。要約すると、このおねーさんはゲームのバーチャルな世界でモテモテで、それにすっかりご満悦。リアルな人生はまったく振り返っていない…… ってとこです。まぁ俺もたまにはゲーム位するけど、やりすぎはいかんなぁ。
 ちなみに私はガンランス使いです。
「どーでもいいから署長にアポとって……」
「アポなんかとらなくていいから行っていいわよ。警備課にいるわ。さっきからお待ちよ」
 待ってるならとっとと伝えてよ。
 俺は底知れぬ疲労感を感じつつカウンターから離れた。ジュンもアリスに会釈してから後についてこようとした。そこをまたアリスに呼び止められた。
「お嬢さん、お名前は? あたしアリス」
 突然まともな大人の顔になったおねーさんにちょっと面食らいながらもジュンは丁寧に答えた。
「セーノ・ジュン・ローランドです。よろしく」
 アリスは一瞬だけ表情を止めた。
「珍しいお名前ね。ごゆっくり」
 俺達は静かになった受付嬢に見送られ警察署の中に進んだ。

「インパクトのある人ね」
 アリスが見えなくなるとジュンは笑い出した。
「しばらく忘れられそうにないわ」
「しばらく寿退社無しで、あそこに座っていそうだがな」
「あー、失礼だ」
 そんな話をしながら俺達は警備課に到着した。ノックもしないで小声で「こんちはー」と言いつつこそこそと入る。なぜか堂々と入れないのが警察署という所だ。
 シェリフ、ロバート・エバンス署長は事務所の奥、警備課長の前にいた。こちらに背を向けデスクの前に突っ立ってなにやら大声で話している。まぁ、あんな事件の後ですから何を話しているかは想像つくけどね。署長だというのに薄い青の長袖Yシャツの簡易制服を着て腰には使い込まれた大型拳銃「コルト・ガバメント」と伸縮警棒、手錠がぶら下がったガンベルトが巻かれている。現場に出張る気満々だ。
 俺がもう一度声をかけると気づいて振り返った。学生時代はアマレスをやっていたとデマを流しても誰も疑わないごっつい体の上に、真っ黒でゴリラみたいな顔が乗っている。すごまれれば誰でも失禁しかねない迫力の持ち主。これがこの町の英雄「シェリフ」だ。
 シェリフは遅かったな、と不機嫌そうに言うと奥のドアを指差しそこに歩き出した。署長室である。何度かお邪魔している。悪い事したからではないぞ。
 署長室は大して広くない。せいぜい6畳くらいだろうか。執務用のデスク、応接セット、本棚があるだけで中はきちきちだ。本棚の横には数本のトロフィーと感謝状が飾られ、その手前に今署長が吊っているのと同じ仕様のガバメントが飾ってある。大型化された照準器以外、外観は変わって見えないが細かいところが実用一点張りのカスタマイズを受けている。わが社の社員ジム・ロダンの製作品だ。この銃については機会があったら述べよう。
 部屋に入り奥のデスクに着き、俺たちに応接用ソファを勧めるとシェリフはこう切り出した。
「ベイは勝てないな」
 のっけから挑戦的な発言である。
 ベイとは言わずと知れたプロ野球チーム「ベイブルース」の略称である。お隣の港町を本拠地とし、その名のとおりのマリンブルーのユニフォームがいかす俺のご贔屓球団だ。しかしながら現在4年連続最下位、今シーズンもこの春先の時点ですでに終わったと言われている弱小球団である。だがしかし、他人にそれを指摘されればやはりむかつくのである。
「まだ100試合以上ある。まだまだシーズンをかき回せるさ」
「本気で言ってるのか?」
 真顔で言われると困る。ふんっ強いから好きなんじゃないやい。愛だろ愛。
「まぁそんなことはどうでもいいが」
 どうでもいいなら言うな。
「お手柄だったな」
 皮肉たっぷりな言い方だった。なので俺は、
「いやあ、それほどでも」
 と、照れて答えてみる。
「おかげで市長の駅前演説が中止になって警備課が暇になった」
 完全にスルーしやがった。俺が出て行かなくても中止になったと思うが。
「白昼堂々3人も撃ちやがって。」
「はい、ライセンス」
 差し出したのは拳銃所持許可証。俺のは多弾装ライフルとマシンガンまで携帯可能なA級ライセンスだ。試験にパスした上、余分に税金納めると貰えるお札だ。ありがたく思え公僕。
「そんなもん見飽きた。次の書き換えの時はもうちょっとましな写真を取れ」
 自動車の免許もそうだが何故証明写真というのはいまいちな写りになるのだろう。長年使う物だし撮る人も少し気を使ってほしいものだ。
「何度も言うがお前は警官じゃない。拳銃所持許可証は自衛のために発行されるもので警察権を認めたものじゃない」
「ここは俺の街だ。自分の街は自分で守る。当たり前の事だろ」
「お前は悪党撃ち殺して英雄気取りかもしれないが、銃撃戦の流れ弾が誰かに当たったら?お前は責任取れるのか? それだけじゃない。お前の真似をして自分もできると勘違いしたガキが返り討ちにあって殺されたら? お前知らぬ顔できると思ってるのか」
 まぁ…… 言いたい事はわかる。
「でもあの時ケンちゃんが行かなかったら強盗は逃げてました。逃げた強盗がまた犯罪を犯して誰かを傷つけたら、その時は警察は責任を取れるんですか? 責任を言うなら目の前の交番にいてもたもたしていた警官にこそ問題あると思います」
 突然横から援護射撃があった。署長は、いや俺も驚いた。
 まさかここでジュンが、おっかない顔して怒ってくれるとは思わなかった。署長も意外すぎる助っ人にやや舌が回らなくなった。
「あいつらは倉庫番に飛ばす」
 苦々しく言った。女の子は苦手なんだろう。署長は俺を睨んだ。
「女の子の力を借りて恥ずかしくないのか」
「別にー」
 むしろえへんぷい。
「ついでにこの娘と同じような意見が市役所とここに仰山届いている」
 署長はデスクのノートパソコンをこっちに向けた。俺を擁護し即時解放を求めるメールがいっぱい着ていた。もっと過激に警察批判するメールもいっぱい。