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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

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「お前まで一緒に恨まれているという可能性はどう考えたって低い。まして大勢の人間が襲ってきたことから組織的な犯行だ。となればお父さんの仕事の関係で何か揉め事があったに違いない。で、お前が巻き込まれたということは「よくある話」的にはお前が何かやつらに都合の悪い物か情報を持っているに違いない」
「そんなのもらってないわよ」
 こいつ…… 簡単にゼロに戻しやがった。
「気がつかなかっただけじゃないのか。誕生日にもらったぬいぐるみにメモリが隠してあるとか、ペンダントに暗号が隠されているとかよくあるだろ」
 ジュンがジト目になった。
「ドラマだとよくあるわね」
 一拍置いて付け加える。
「現実だと聞いたことないけどね」
 くそ…なんてかわいくないやつだ。
「何かお父さんの持ち物を持ち出してないか」
 三郎が割り込んだ。助け舟というより業を煮やした…という感じだ。
「んーと」
 ジュンはバックの中をごそごそと確認した。
「そういえばI-podを間違って持ってきちゃったな」
「それだ」
 全員が声を上げた。
「どう考えてもそれだろ! 5秒考えればわかるじゃねーか!」
 温和な俺もさすがに切れた。ジュンは少しは反省するかと思ったがなお引かなかった。
「だって何も入ってないのよ。雑音のデータが少し入ってるだけ」
「それだよ! パソコンのデータだろ、それ!」
「パソコンのデータが雑音なの?」
 ジュンがキョトンとした。この辺は女の子だ。機械にはそんなに強くないのだろう。ジムが優しく解説する。
「音声でデータを残すことも出来るんだよ。昔はカセットテープでセーブしてたくらいだからね。しかし今時アナログデータとは」
「へー」
 ジムはI-podを預かると事務所のPCで解析しに立ち去った。三郎はコーヒーをジュンにいれると静かに切り出した。
「お父さんが何故殺されたか知りたいと言ったね。本当に知りたい?」
 ジュンは勘がいい。三郎が何を言いたいか解ったようだ。
「知らないほうがいいかもしれない…… ってこと?」
 三郎はうなずいた。真剣な表情で何気なく長い髪をさらりとはらう。意識してやってないようだが…… やけに決まってやがる。むかつくな。
「君にとってお父さんは優しくていい人だった…… それでいいんじゃないか?あのデータで何がわかるかはまだわからないが…… 人に殺されるっていうのは尋常な事じゃない。このまま、忘れてしまった方がいい気がするよ」
 ジュンはさすがに考え込んだ。むむむ、三郎の野郎なにいい人になってやがるんだ。今日一日いい人だったのは俺だぞ。
「パパは…… 正直いい人じゃなかったわ。いつも仕事ばっかりで、人に恨まれることもあったと思うわ」
「だからって娘が父親の汚い部分まで見ることはない」
三郎の声はジムのように暖かくはなかった。突き放すような冷たさが感じられた。こいつは時折こういうところを見せる。特に身内がらみの話になると。やつの生い立ちに関係があるのだろう。
「真実を知るより、パパは本当は優しいいい人だった…… と思い込むほうが残りの人生にとっていいことだと思うがね」
「真実より綺麗な嘘のほうがいい……」
 俺は珍しく三郎の意見に感じ入っていた。これは真理かもしれない。女の子はよく愛しているなら嘘は言わないで、とか言う。しかしそんな物が愛情だろうか。少なくとも俺は俺に嘘をついてくれない女は愛せそうにない。
「それでも……」
 ジュンは予想通りの言葉を発した。
「後悔しても真実が知りたいわ」
「そうか」
 三郎は静かに言って自分もコーヒーを飲んだ。
「そこまでの覚悟なら俺は何も言わない。協力するよ」
 そう言って立ち上がり手を差し出した。ジュンは少し涙目になりながらその手を握った。
 なんと見事な!
女の子の手はこうやって握るのか。参考になりました。
そこにジムがペーパー片手に帰ってきた。もう解析できたのか。
「まったくガードがかかってなかった。読んでくれ、という物だったよ」
 1枚目のペーパーには見出しがあった。
 私が殺害または不慮の死、行方不明になった場合この人物が関係している。
 なんとストレートな。ローランド氏は自らの身に危険があることを察していたことになる。
 その男の名は鈴木治夫。隣町出身の国会議員だ。大会社の経営者でもある。政治家が邪魔な実業家を消す。ありがちな話だ。
「写真データもある」
 ジムは2枚目のペーパーをしめした。その表情は曇っていた。そこに疑問を感じつつ写真を見て俺は目を疑った。
 な、なにぃ?!
「こ、こいつが本当に関係しているのか?!」
 俺は思わず立ち上がり声を上ずらせてしまった。ジムはため息をつきうなずいた。
「添付されていた写真はそれだ。鈴木氏のHPも確認したが本人で間違いない」
 そんなはずは!
 コピー用紙に印刷されたその写真には、我等がベイブルースのユニフォームに半被といういでたちで踊り狂うおっさんが写されていた。
「ばかな! ベイファンに悪い人はいないはず?!」
 エキサイトする俺とは反対に冷め切った視線をジュンは送ってくれた。
「まじめな話してるときにふざけないで」
「ふざけてはいない! 何かの間違いだ、この男は悪い事なんかしない!」
「なんの根拠があるのよ!」
 ええぃ、いちいち言って聞かさなければ解らんのか、この女は。
「ニワカやエセは知らず! しかし真のファンには悪いやつはいないと断言できる!」
「この人が真のファンだってなんでわかるのよ!」
 よかろう小娘、解説してやるわ。
「まず場所だ。ここは言うまでもなくホームグラウンドのハマスタだ。立っている位置は友の会の招待券で入れる内野Bだ。この男ベイ友の会の会員である可能性が高い」
 ジュンの視線が冷ややか通り越して軽蔑の領域に入り始めた。が、かまうことはない。
「次にユニフォーム。これは前回優勝したときのものだ。優勝したのは前世紀だから長年のファンということだ」
「形だけのエセかもしれないわ」
「ちがう。この男の踊りを見ろ。これはラッキーセブンの時にマスコットキャラのボッシー君が踊るものだ。これはプレイの合間にやるからテレビには映らない。ハマスタに行って直に見るしかないのだ。それをマスターして踊っているということは何度もハマスタに足を運んだ猛者ということになる」
 ジムは苦笑し三郎は横向いてシカトを決め込んだ。
「この人がベイファンなのは納得したわ!でも肝心のベイファンに悪人はいないって根拠を言いなさいよ!」
 まだ解らんのか…… しかたない、故事を交えて伝えてやろう。
かつて三国時代の中国に劉備という英雄がいた。その男が国を失い、ある領主の下に世話になっている時、趙雲という豪傑がわざわざ慕って部下になりにやってきた。人生で最も苦しい時に何の得にもならないのに自らを支えようとやってきてくれた趙雲を劉備は心から信頼した。その後大軍に追われ逃亡する際、趙雲は一人敵軍に駆け込んで行った。劉備の腹心は趙雲が裏切って敵に投降したと報告した。しかし劉備は趙雲は自分を絶対に裏切らないと一喝した。果たして趙雲は敵軍に取り残された劉備の家族を単身で救い出し見事帰還したのだ。
「……それとベイと何の関係が……」