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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN 1 ルガーP08

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「本当に皆まで言わなければならん奴だな!いいか、ベイブルースは現在4年連続最下位だ! どん底と言っていい! そんな弱いチームを本気で応援できる奴に悪い奴がいようか? いいや、いるはずがない!」
 反語まで用いて解説した俺にジュンは圧倒され、言葉をつげなかった。
「まぁ…… 勝手にしてよ」
「エキサイトしているところ悪いんだけど」
 ジムが切り出した。
「名前書かれてるの鈴木治夫本人じゃなく妻の方な?」
「へ」
 よく見ると写真にも踊り狂う鈴木氏を隣から冷ややかに見つめるおばさんが映っていた。

 一同解散の後、俺は興奮を収めるべくシャワーを浴びた。
 我が社の風呂場は3階にあり共同使用である。4~5人が入れるほどの広さなので湯船にお湯を張るのは面倒だったのでシャワーのみだ。
 すっきりして湯気と共に風呂場を出るとジュンがにらんでいた。
さっきも行ったとおり3階はプライベートエリアであり俺達の個室のほか2階の物ほどではないが小さなリビングがある。風呂場はそのリビングから入れるようになっていてジュンはそこで待っていたようだ。
なんだよ、という前にヤツは突っかかってきた。
「普通一番風呂はお客さんに譲るものじゃ無い?」
 ずいっと緑の瞳を突きつけられた。その手にはさっきのスポーツバッグが握られていた。
 なるほど、また風呂に入りたかったのね。これは気がつきませんで……
 シャワーだけだよ、と断り俺は風呂場をジュンと代った。
 すれ違い様にヤツはボソッと言った。
「のぞくなよ」
 ふむふむ、うむうむ。 
 何も言い返さず、まだ濡れた髪を拭きながら一番奥の自室に入る。部屋は6畳。ベッド、机などを置くとあまりスペースは無い。ベッドを折りたたみにしようかとも思うが部屋には寝に帰る程度なので現在ほったらかしにしてある。
 ベッドに腰掛今日を振り返る。
 色々あった…… 人生の中でも比較的濃い一日といえよう。
 銀行強盗ブッたおしてジュンのボディーガード引き受けてまた銃撃戦やって……
 水音がかすかに聞こえる。
 安普請の建物ゆえ風呂場の音がちょっと響いてしまうのだ……
 ふむ…… なにを振り返っている。今日はまだ終わっていない。
 いやメインイベントはこれからでしょう、むふふ。
 俺は決然と立ち上がり廊下へ。片手には愛用のオリンパス社の一眼。
 いざ出陣。
 と、目の前に大きな人影があった。ジムの背中だった。手に大きな棒状の物を持っていた。
 えー…… それは……
 ジムはそのままリビングに腰掛け手に持っていたものをいじり始めた。
「な…… なにを?」
 つい声をかけてしまった。間抜けに風呂場の前に突っ立ちながら。
 ジムは顔をあげいつもどおりの爽やかな笑顔で答えてくれた。
「ああ、なんか物騒なことになるかもしれんからな。用心のため、ちょっと手入れだ」
 ジムが持っていたのはM14ライフル。アメリカ初のバトルライフル、つまりセミフルオート発射が可能な自動小銃だった。デザインはクラシカルなボディ全体を木のストックで覆った物。おそらく一般歩兵用の小銃としては最後のライフルらしいライフルだろう。
 弾丸はNATO共用の7.62mm弾。現在主流の5.56mmよりはるかに強力だ。
 しかしながらそれゆえフルオート発射時の反動はすさまじく普通の人間にはコントロールし難い。
 ジムはこの古めかしい銃が大のお気に入りだ。
 ジムの体格ならこのじゃじゃ馬も使いこなせてしまうのだ。
 まぁ何が言いたいのかといえば…… 有無…… 撃たれたら蜂の巣の上ぺしゃんこだな。
 ジムは俺の手の中のカメラに気づいた。
「カメラなんかどうするんだ?」
 え! いやね……
「せっかく女の子来てるしHP用に記念撮影でもーとか」
 するとジムはダンディに笑った。
「いいね、しかし明日にしよう。風呂上りの女の子を撮るわけにはいかないだろ」
 ははっ、それもそうだねー。
 俺はくるりと回って退散することにした。
 廊下を引き返す途中で三郎も部屋から出てきた。
 手にはM4カービンを持っていた。これは最新のアサルトライフルで…… まぁいいや、そんなこと。やつは俺が何も聞く前に口を開いた。
「デバガメが現れるんじゃないかと用心だ……」
 ははは、心配性だね君たち…… そんなのこんなところに現れるわけないじゃ無いか……
 ふいに風呂場のドアが開いて「なに?」と濡れたジュンの頭がこちらを見た。
 ちゃんとシャツを着込んでいた。せめてタオル1枚で現れるくらいのサービス精神は無いのでしょうか。
 なんでもねーよ、と手を振って俺は部屋に戻った。
 いやはやなんとも…… 現実にはラッキースケベってのは起きないのだな。

 あくる朝。夕べはその後何もなかった。何もしなかった。
 ジュンちゃんのお風呂も覗かなかったし、夜這いもかけなかった。
紳士だ、我々は。
が、女の子が自宅に来てお風呂はいったり寝泊りするってなんかドキドキするね。
で、俺はいつものように6時に起き軽い柔軟体操の後ランニングに出かける。10キロを30分で走る。実戦的なランニングだ。続いて筋トレ。で、7時になる。朝飯は各自適当に用意して食うのが慣例。俺はベーコントーストとポテトサラダを大量の牛乳で流し込む。この辺でジュンが起きてきて朝飯をよこせとおっしゃったので分けてやった。こいつが朝飯作ると言い出す前に用意しておいたのは正解だった。
ジュンは昨日とは服装が変わっていた。白のTシャツに薄いピンクのベスト、今日もミニスカートで色は白かった。下着も替えただろうけど何色かまでは情報を持っていません。
家出中だってのに衣装もちなやつ。
とにかく俺達はおばさん「鈴木 峰子」と接触することにした。おばさんの情報はすでにラーメン屋から出前済みだ。接触そのものは三郎が任せろの一言で引き受けた。少々むかつく野郎だが仕事に関しては抜群だ。任せとけばまあいいだろう。で、俺は引き続きお嬢様の護衛なのだがさすがに今日はラクチンだろう。何しろ命を狙われているかもなのだ、が。
「お前狙われてるんだから出歩くなよ」
「やだ」
 という会話でややこしくなった。
 普通に考えて俺の意見は正しい。そうだろう、怪しい組織に狙われているのだ。出歩こうとする方がどうかしている。
「確認したい事があるのよ」
 駄々っ子というより少し男前な顔つきだった。それで俺は真面目に聞いてやった。
「何をだ」
「パパの殺された場所に何があるか」
「もう行ったんじゃないのか」
「行ったわ。なんて事のない下町だった」
 やれやれだ。
「ならなんで」
「おかしいと思わない?」
 エメラルドの瞳が厳しく俺を見つめた。
「どこに笑いの要素が」
「…拳銃会社の社長がなんで下町なんかにわざわざ出向いたのか。そこを狙い済ましたように殺されたのか」
 ふーむ。
「昨日行ったときは疑問に思わなかったけど、夕べ考えてたらどうにも気になって」
 プロの殺し屋が待ち伏せしていたのなら当然ローランド氏がそこに行く必然性があったはず…というのがジュンの意見だ。論理的だ。しかし危険すぎる。
「俺達が見てくる。お前はここにいろ」