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ヤマト航海日誌

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2014.8.10 『ヤマト』との再会



『ヤマト』のオールドファンではあっても決して現役ファンではない、というのはここまでに書いた通りだ。こんな投稿をしていてもおれは自分が現役だとは思っていない。

現役ファンとはキムタク主演の実写映画とか、『ヤマト2199』を喜んで見てるやつらのことだろう。おれはあんなの、到底見ていられないのだ。

『ヤマト』をずっと忘れていたおれがまた『ヤマト』を見つけたのは、2010年、キムタク主演で映画になると聞いたときだった。最初はてっきり冗談だと思ったが、なんとほんとに公開になっているでやんの。

職場にすごい映画好きの人がいて、話題作ならほとんどみんな公開初日の初回に行くか、試写会や先行オールナイトで見ていたりする。おれは公開翌日に、早速その人に聞いてみた。「『ヤマト』見ました? どうでした?」


「見たけど、どうも……」


そんなような返事だった。しばらくしておれも見たが、なるほど、『どうも……』といったような出来だった。けれどもおれは、そこそこに満足して劇場を出た。実写でやればこんなものだろうという気がしたし、子供向けに作ったものだろうとも思った。ならば大人がどうのこうの言うべきではない。

だが何より、あのキムタクが古代進をやってくれたというだけでおれはうれしかった。あのときまでおれは『ヤマト』を愛したことを自分の中でなかったことにしてしまっていた。

だがあの映画はそれを思い出させてくれ、子供の頃のおれは決して間違っていなかったと教えてくれたのだ。少なくとも、あの映画にはそう感じさせてくれるものがあった。

それにしても、巷に聞こえるあの映画の一般評はさんざんだった。あれで始めて『ヤマト』に触れた人々は『一体なんだ荒唐無稽なあのシロモノは。昔の人は本当にあれをリアルと呼んで見たのか』。そして旧作を知る者は『あれは〈ヤマトごっこ〉だね。学芸会のごっこ劇だ』。

いやまったく、どちらの意見もおっしゃる通りで、おれも同感と言う以外に何も言葉がないのだが……。

おれは結局、またすぐ『ヤマト』を忘れてしまい、しばらく経った。翌年の夏にテレビが地デジ化されるというのでケーブルテレビ会社の人が来て、これでCSが見れると言った。断る理由もなかったから勧められるままコースを取って、映画なんか見るようになった。

〈『ヤマト』のオリジナルTV版全26話一挙放送!〉。あるチャンネルでそれを見つけて録画するだけしたのだが、たぶんあの映画のことがなかったら予約なんかしなかったろう。ディスクに焼きもしたけれど後で果たして見るかどうか……そのときは実は見ないんじゃないかと思った。ブルーレイのディスク一枚、百円にもならないのだし、場所も取らないのだからまあいいか――そんな程度の考えでいた。

実際、何ヶ月も見ずにおき、ふと取り出して機械に入れたが、たぶん続かないだろうなと思った。ちょっとだけ見て棚に突っ込みその後はもう本当に見ないだろう――最初はそう思っていた。

だが違った。日に一話と見始めて、三日目にはもう画面から目が離せなくなった。第五話か六話まで行くともうやめられず、その先の二十話ばかりをたった一日で見てしまった。

ケーブルテレビにハードディスクレコーダーにブルーレイのおかげとは言え、こんなことはかつて一度もなかったことだ。特に第19話。相原が精神的におかしくなってしまう話にはつい泣かされて、次の話に進む前にもう一度見た。最後まで見通した後でまた〈19〉だけ見直した。

『ヤマト』とはこれほどまでに素晴らしい作品だったのかと、改めておれは深く思い知らされたのだ。

今の子供にオリジナルを見せたところで、彼らがあれをいいと思うのかどうかわからない。まして中高生などなら、古いうえにガキ向けのものと思うだけのことかもしれない。

それもしかたがないだろう。『ヤマト』は一時はブームとなったが、決して幸運な作とは言えない。欠陥のあまりに多い作でもある。それでもあれを愛することのできる者にはかけがえのない作品であり、ブームのときに小学生であれを見れたおれは本当に幸せと思う。第19話を見て今も泣けるおれは幸せだと思う。

普通の人には『ヤマト』は荒唐無稽な〈マンガ〉だ。おれだってそう思って忘れていたクチなのだからよくわかる。が、さて『2199』――今の子供や中高生は、あれをおもしろいと思って見るのか? あれをリアルと感じるのか?

そこのところがよくわからない。どうしようもねえヲタクの作ったキモワルアニメじゃねえのかよ。あれを見て泣いたり感動したりする人間がいるのかよ。『2199』に限らず今どきのアニメなんかに人間を描いたものがどれだけあるっていうんだ。

『2199』がまずOVAとして出たのはおれも前から知っていたが、やっぱり興味は持たなかった。オリジナル全話を通して見ることがなかったら、地上波であれが始まったときも決して見ようとしなかったか、見たとしても最初の五分で『ひでえ』と思って消してそのままだったはずだ。

『2199』、いや、まったく――『キムタク主演実写版』はまだ少なくとも楽しんで見ることができたが、しかし、あのアニメとなると――どうしておれがあんなもの続けて見ようなんてしたのか、何回かでも見ることができたか、ほんと不思議に思いますよ。まるで変な宗教の洗脳部屋に押し込まれイカレたビデオを強制的に見せられたようなもんじゃないですか。

とうとう七話か八話かで岬百合亜というのが艦内放送などというのを始めた瞬間、あのあまりのおぞましさに耐えかねたのだが、そこまでおれは頑張ったねえ。あの拷問によく耐えたよ。思い出すとああ今でもジンマシンが出そうになる。

だからおれは断じて現役じゃないのである。岬百合亜をまともに見たら普通は石に変わるはずだ。免疫を持ってるようなキモヲタじゃない。



作品名:ヤマト航海日誌 作家名:島田信之