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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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帰れない森 神末家綺談5

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虚無の瞳を食らう



屈んでいて固まってしまった腰をとんとん叩きながら、紫暮は立ち上がる。草むしりも楽ではないが、つらつらと取りとめもないことを考えながら、繰り返し草を抜き続けるという単純作業が、ときに息抜きになるのだ。じじくさい、といつだったか瑞に笑われたことを思い出す。じじいはおまえのほうだろう、なんて言いかえしたっけ。

「紫暮さん」
「片付いたかい?お昼にしようか」

蔵から出てきた伊吹が、真剣な眼差しを向けてくる。つい先ほど、ばたばたと飛び出してきたときとは違う。思いつめたような、ただごとじゃない表情だ。

「どうしたね」
「・・・見つけたんです、瑞の、あのっ・・・」

伊吹に言葉にすべてを悟る。知りえたかった記録が、ついに見つかったというのだろう。

「一緒に見てもらえませんか。俺、なんか・・・一人じゃちょっと・・・」
「勿論だよ。行こうか」

昼ごはんは、少し先になりそうだった。
地下を目指して歩きだす伊吹の背中を見ながら、紫暮は軽いショックを覚えていた。

彼がこの書庫にこもって、たったの二日だ。あの膨大な数の知の書物から、ピンポイントに知りたいことを探し出すことができた者など、いまだかつていない。穂積を除いては。

(やはり彼は、何か大きな力に導かれているのだろう)

紫暮も一族のなりたちや式神の秘密について調べていた時期があったが、めぼしいものは見つけられなかった。ある程度のことはわかったのだが、ある一定の領域へは進めなかった。

それはつまり、紫暮にはこれ以上のことを知る資格がないと、書物に宿る歴代のお役目たちに選別されたからなのだ。
正直なところ、少し悔しい。自分は須丸の跡目、神末のバックアップに過ぎないということを思い知らされた。伊吹のようにこんな幼く脆弱な子どもだとて、やはり神と婚姻するさだめを負っているのだ。