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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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ことっと小さな音がした。
私は思わず目線を音のした方に落とす。
すると、そこには白いカップと湯気を立てるコーヒーが置かれていた。
脇に立つのはマスターで、私が目を丸くしていると、『ちゃきっ』と横ピースを顔の前でぶちかました。
「いやあ、暇だねえ。古くなりそうな豆があったんで勿体ないから一杯入れてみたんだ。飲もうよ?」
そして、そんなことを言い出しやがる。
よく見れば横ピースの反対、空いた手には自分もカップを一つ持っている。
私は頷いて、「いただきます」と告げるとカップを手に取り口元に運んだ。
マスクをずらして一口を啜る。
すると、コーヒーにあるまじきほんわかとした爽やかな味わいがふわっと鼻の方にまで広がった。
「おいしい」
反射的に私はそう呟いてしまった。
きっと目も丸くなっていたことだろう。
マスターは何やらしてやったりといわんばかりの不敵な笑みを浮かべて、うんうんと頷いている。
「飲食業には伏して耐える時期だねえ」
そしてそんなことを呟いた。
私の中にまたさっきの薄暗い気持ちがのろのろと戻ってくる。
「でも、大丈夫だからね?補助金は下りてるし、経営的にはむしろ全く問題ないんだから」
するとマスターはそう続けた。
「そうなんですか?」
私は思わず問い返す。
「まあねぇ。もともと閑古鳥なこの店の規模からすると、頂いたお金は申し訳ないくらいだよ。
 や、それよりも私としてはこの状態こそが、あやめ君に申し訳ないなあと。時間を持て余してるんじゃない?」
そしてマスターはそう言って、自分もカップを傾けた。
「いえ、私はいいんです」
私はそう答えた。
そしてもう一口コーヒーを啜って、マスクを口元にかけなおした。
すると、私の方をマスターが急にまじまじと眺めたので、一瞬面食らった。
「な、なんですか?」
身を縮める私に対し、マスターは眉間にしわを寄せて、あごに手を当てるようにしてうんうんと頷いた。
「や、ほら。『歯科衛生士の女性は美しい人が多い』っていう俗説を思い出してねぇ。
 一説ではそれっていつもマスクで口元が隠されているから患者側の想像力が膨らむせいらしい。
 自分好みの鼻や口元がそこにあると思っちゃうんだそうだ。それでつい、あやめ君の場合はどうかなあ、と」
そしてそんなテキトーなことを滔々と言う。
で、『このとんちきには、私は一体どう見えたのか?』と思っていると、