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霧雨堂の女中(ウェイトレス)

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仮面と女中と霧雨堂


外はややどんよりとした重めの雲が端々まで満ちている。
私は窓越しにそれを眺めながら、ついと視線を下に降ろす。
街中の景色が見える。
車の流れはそこそこ、だけど歩く人の流れは明らかに少ない。

私はマスク越しにふうとため息をつく。
お店の中だって閑古鳥、お客さんはゼロだ。
もともと静かなお店だし、わんさかと客席が埋まるところなんて見たことはない。
だけど、ここまでお客が来なくて時が経つのを持て余すのも異常事態だ。

否、『異常事態』というのがいつもと異なることを言うのなら、断続的にではあるけれど、もう2年もこんな感じなのだから、どこかで聞いた言葉を借りるならこれこそが『ニュー・ノーマル』なのかも知れない。

――だとすれば、私はここにいて大丈夫なのだろうか?
もしかするとマスターも、ここの経営が相当苦しいんじゃないだろうかと考えてしまったりする。
いつ自分が『肩叩き』にあったとしても、正直全くおかしくはない。
そんなことを考えていると、私の気持ちも天気のように薄暗く沈んでいく。
言い知れない思いからついくしゃっと黒いエプロンの前を握りしめてしまう。