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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  5話  『少女との再会』

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<1章=少女との再会>

と、これはゲームではなく、現実なのでそんな選択肢は必要ないな。
俺はあいつらみたくゲーム脳でないんでな。適当に時間を潰すとしよう。

「まぁ、どうせ1時間だしな。適当にぶらぶらすっか」

そうと決まると、俺は適当に校内を徘徊するのだった。

「しっかし、いざ適当にって思っても特に目的もなく歩くってのは暇だよな。それにだッ!新入生ならともかく学園内を知り尽くしている俺にとっては新鮮味の欠片もねぇしなぁ」

あぁ、初々しかったあの頃が懐かしい。今この時だけあの頃に戻りたい気分だ。
よし、そうだ!せっかくだからあの初々しかった頃を思い出してみよう。

俺が唯一好きな言葉にこういう言葉がある。
それは、『初心を忘れずに』だ。

これっていい言葉だよなッ!?サイコーだよなッ!!
そうだよ。今こそ初心に帰る時だッ!この絶好の機会を逃す手はないッ!

さぁ思い出せッ!あの頃の俺を!
さぁ今こそ甦る時だあああぁぁぁああああッ!!!
俺の記憶よおおおぉぉおおおッッ!!

-キュピーン!!

その時俺の頭のてっぺんで何かが開き始めたッ!!
おぉ~これは入学初日のあの初々しかった時の俺じゃないか!実に懐かしいッ!!
この頃はまだ右も左もわからなくて学園内を右往左往してたっけ。

実に初々しいッ!!

うんうん!時には初心に帰ることもいいことだなぁ~しみじみ~。
俺が初々しかった頃の自分と記憶にしみじみと浸っていると、
おっ!?これは入学式の会場か?
…おっ!?見覚えのあるヤツ、これは…凍弥、それに暁じゃないか!
今と全然変わらないな。

ん?何だ、3人揃ってステージの裏へと入っていくぞ??
…あぁ、そうだ!思い出したぞ!!

確か凍弥が、
『こんな普通すぎる入学式はつまらん。もっとド派手な入学式にしてやろう』
とか言って俺たち3人でステージに細工したっけ。あれは実に楽しかった!!

学園長が登場する時にはド派手な火薬で演出し、校歌斉唱時には予め凍弥が用意していたラップ調にアレンジされた校歌のCDを流したりと…。あれはかなりウケた。

あぁ思い出したらすげー笑いがこみ上げてきたぜッ!!
あはははは!ははは…は?

って……アレ?
ナンダカさっきからナニか忘れているような…。
そもそもナンデこんなこと思い出してるんダッタケ?

ネタ作り?違うな。
淡い青春の1ページ?何だそりゃ。
若き日の回想?老人かッ!

あぁそうだ!思い出した。
初心に帰ることの大切さについてだった。あぁ、よかった思い出して。
このまま思い出せずにいたら初心を忘れるとこだったぜ……?

ってあれ…。
…ちょっとまて。…ナンダカオカシイゾ?
今の回想の中の俺とあれから1年経った俺と全くもって変わらないじゃないか。
あれっ?あれれっ?……………はっ!!

そして俺は気づいてしまったのだ。ある重大な真実をッ!!
それは……!!

「今も昔も全然変わってねえええぇぇぇええええッ!!」

俺の悲痛な叫びが学園全体にこだまする。
あぁ我ながら馬鹿なことをしたものだ。っていうか気づけよッ!!と思わず自分にツッコミたくなるぜ。

あぁちょっと頭痛がしてきた。
ちょうど目の前に保健室も見えてきたし、ちょっと休んでいこう。
そう思うと、俺は保健室まで脚を運び、そしてドアを開ける。

すると消毒薬か何かの臭いが鼻を刺激し、いかにも保健室だという雰囲気をかもし出していた。

「何だ、誰もいないのか」

辺りを見渡すと部屋の中には先生も誰もいなくて無人だった。
まぁいいか、どうせちょっと休ませてもらうだけだしな。
そう思いながら、空いている2つのベッドのうち手前にあるベッドを選択し、そして腰をかけようとする。

「きゃう!」

だが、腰掛けようとしたベッドから何やら可愛らしい声が漏れた。
…なんだ?

ベッドをよく見るとそこには………まどかちゃんがベッドに寝ていた。

「うわぉっ!?ま、まどかちゃんじゃないか」

「ふぇ?え、あ…あれ?雛月先輩?…どうして先輩がここに?」

まどかちゃんの顔がふとんから覗かせていた。

「あぁ、悪い悪い!この部屋、誰もいないと思ってたからさ。だからまどかちゃんが休んでるなんて思いもしなくて…。あ、もしかして起こしちゃったか?」

俺がすまなそうな顔をしてると、

「い、いえ!そ、そんなこと全然ないですぅ!ですから気にしないでください」

寝たまま手をぶんぶんと振って、俺に気を使ってくれるまどかちゃん。
…なんていい子なんだ。
と俺が感傷に浸っていると、まどかちゃんは突然ふとんを被ってしまい顔を半分ひょこっと覗かせる形になっていた。

ん?でも確か今、大講堂で新入生歓迎会やってたはず…。
まどかちゃんも新入生だよな。まどかちゃんがここにいるってことは…。

「もしかして、まどかちゃん、歓迎会は体調を崩して?」

まどかちゃんは困惑の笑みを浮かべる、それと同時に明るく微笑んでみせた。

「…は、はい。…ま、まぁ」

よく見るとまどかちゃんの顔が少し赤い気がする。

「もしかして、まどかちゃん風邪ひいてるのか?顔がちょっと赤いけど…」

「い、いえ。風邪は…ひいてないです」

「そうか?でも顔が赤いぞ?それにさっきよりも赤くなってるみたいだし…ホント大丈夫か?」

「は、はひぃ…大丈夫です。別に病気とかじゃないですから」

「そうなのか?」

「はい…。ただ…あの…恥ずかしい…な…って」

「え?!何で?!」

チラリと見えるまどかちゃんの顔は、ここからでもみるみる赤くなっていくのがわかる。

「わ…私の…こんな寝ているトコ…先輩に…見られるのは…恥ずかしいな…っと…ふにゅぅ」

まどかちゃんの顔が一気に真っ赤に紅潮し、頭からやかんのようにしゅーっと湯気をあげ、そのまま顔が見えないようにふとんを被ってしまった。
まぁ何ていうかその…一言で言うとだな、……可愛いすぎるッ!!

「わ、わかった。そういうことなら俺もう行くからさ。だから、まどかちゃん悪かったな。んじゃ、お大事に…」

そう言うと、俺はドアに手をかけ保健室から出て行こうとする。

「ま、待ってくださいっ!!」

まどかちゃんは覆っていたふとんをバサッとめくって、俺を呼び止める。

「ご、ごめんなさい。私が恥ずかしがったばっかりに…先輩にご迷惑をかけてしまったみたいで…あの、ごめんなさいです」

まどかちゃんは、今にも泣きそうな表情で、おろおろしながらペコリと頭を下げる。

「別に謝ることじゃないって!俺、男だからよくワカランけど女の子はそういうの気にすると思うからさ。だから、気にするなって!」

俺はすかさずフォローを入れる。

「は、はい。ありがとうです。先輩」

まどかちゃんは、ぽっと頬を紅潮させ、上目遣いで嬉しそうはにかんでいた。
まどかちゃんは可愛いなぁ。…もう何というかぎゅっとしたくなるぜ。
思わずその表情に見惚れてしまった。

「でも、いいのか?俺がここにいても?まどかちゃん恥ずかしいんだろ?」

「い、いえ。も、もう大丈夫です!平気ですっ!ですので、先輩もここにいてもいいですっ!」