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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  3話  『サイセイ』

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一体どうなっているの?彼女の力がここまで強大だなんて…。
そんなことって…。

「どうした?怖くて攻撃できないのか?ハハハ。それでもフィーア・ノヴァの娘か?この私を失望させるなよ、アミーナ・ノヴァ!!」

「…あぁッ!」

アミーナは鋭く息を飲み込んだ。
視線の先には絶体絶命の無数の焔の刃。ダメだ、詠唱が間に合わない。
どうしよう…。一体どうしたら…。




「…何だよ…これ」

虹ヶ坂公園に到着した俺は、ここに来てようやくあの異質物体の姿を目の当たりにした。

「でも、何でこんなものがここに…」

俺はその異質物体に触れようと手を伸ばしてみる。

「痛ッ!何だよこれはッ!触ってもねぇのに…」

バチッと異質物質に触れる前に、何かの強い力により反発が起き手を弾かれてしまう。
手を見てみると軽く赤くなっていて、ちょっとヒリヒリする。

「どうすりゃいいっていうだよ…。こんなもん…」

俺がどうしたらいいかと頭を抱えて、バリバリと頭を掻き毟り途方に暮れていた。
だってそうだろ?
触れることも、それでいて壊すことも出来ないとなればもうお手上げだ。
どうすることもできん…。

でも、それならここで何もせず諦めるのか?
…そうじゃないだろ。ここで諦めるわけにはいかないんだ。
おそらく、この中にはまどかちゃんがいる。
そして、今、まどかちゃんを助けることが出来るのはたぶん俺だけなんだ。

何だか俺にもまだよくはわからんが俺には何らかの力があるはずなんだ。
忘れてしまって今まで思い出せないでいたらしい俺の力…。俺に宿りし秘められた俺の力…。

そんな力が本当に俺にあるなら使えるはずなんだ。
…っていうかここで使えないでどうする俺の身体。
これじゃ中にいるまどかちゃん…いや、誰も守ってあげることなんか出来ない。
悔しいがそういうことだ。誰かを守ってやるってそれぐらいの勇気と度胸…そして、それだけの覚悟。

そう。いつでもその大事な人を守ってやれる盾、いつでも寄り掛かっても倒れず支え続けてあげられる剣のような力がなければ守ってやれないんだ。

誰かを守ってやるってこういうことだ。

そして、今、俺はそんな状況にいる。だが俺の場合は違う。守ってやれるだけの力があるのにそれを使えずにいるんだ。このままこうしてのろくさしてる間に取り返しのつかないことになるかもしれない。…俺はそんなのはいやだね。

俺は今までのようにみんなと平穏無事に暮らしたい。毎日が楽しくて笑っていられるそんな日々をこれからもずっと…。

だから、俺に力を貸せよ。本当にあの記憶が正しいのなら力を使ってみせろ。
今だけでいい。今だけ俺にその秘められた力があるならそれを示せッ!!!
でねぇと、俺が俺をぶっ壊す!!断言してやるよ??いいか、よく聞け。

大事なモノを救えねぇ俺なんて必要ねぇッ!!そんなの俺じゃねぇッ!!!!
断言してやるよ。

大事なもんも守れねぇテメェの無力さを言い訳に諦めやがる三下になりさがるくらいなら俺の命に代えても命を捨てても足掻いてみせるッ!!!

「な…何だ?!」

突然、俺の身体全体が光で包まれて俺の身体全体が光り輝き、そこで俺の意識が途絶えたのだった。




あれから、どれくらいたっただろう。
私はかろうじて生きている。
大幅に魔力を消費するが、魔力を身体全体に集中し、留めておけば詠唱しなくても守りを強固に固めることができる。

それで絶体絶命の危機を逃れたが、代償に反撃するだけの魔力がほとんど失われてしまった。あれから未だに魔法と魔法との攻防戦がこの公園で繰り広げられている。

公園の中を走り、跳び、転がり、そして、互いに対峙する。
さらに、放ってはかわし、また放ってはかき消し、そして、隙を見て呪文を詠唱し、技を繰り出す。それを防ぐときもあれば防ぎきれずやむを得ず攻撃を受けてしまう。

その繰り返しだった。

私は力を使い果たしてしまい、ふらふらになり肩で息をしながらも何とか立っていた。
これ以上は危ない。逃げなくては、このままでは。

「はぁ…はぁ…はぁ」

「フフフ、息があがっておるぞ??この攻撃を前にしてちんたら止まってる場合ではないぞ??」

顔を上げると、その瞬間、まるでマシンガンのように標的をロックオンされた私という獲物に狙いを定め、炎の弾丸のようなものを撃ち込んでくる。

反射的に急いで立ち上がり、それをかわす。

「あーっははは♪♪ほれほれ、逃げろ逃げろ♪♪まだまだいくぞ♪♪」

容赦ない炎の銃撃。一発でも当たれば蜂の巣にされるだろう。
逃げてばかりでは状況は好転しない。
ならば反撃あるのみだ。

「イージス展開っ!!!」

即座に光の障壁を張り、続いて次の攻撃術式と呪文詠唱する。一瞬の隙も許さない。
炎の弾丸は至って単調に私に一直線に向かってきている。一発一発あまり力は感じない。
おそらく彼女のことだ、じわじわと痛ぶろうという魂胆であろう。
それなら、一度に消し去り、それ以上の力で反撃すればいいだけのことだ。

「標的ロックオン、いきますっ!!」

一気に高めた魔力を一気に放つ。
強力な熱量、それはまるでビームのようなそれは炎の銃弾を飲み込み無効化していく。
そして、彼女へぶつかろうとしている。

「フフ、やるではないか!!だが、これも読み通りなのさ♪♪」

ニヤリと笑みを浮かべると、私の術式に似た詠唱をし、その強力な爆発的な炎で覆う。
まるで力を押し殺すかのように包み込んだ瞬間、その炎の中で魔力が暴発した。
やはり、私の力では歯が立たない。

これではどうしようもない。このままでは、対抗する術もなくやられてしまう。

「はぁ…はぁ…。あはは、驚いたぞ。凄まじい魔力じゃないか!!さすが、あやつの娘だけはある」

「そんなこと今は関係ありません。なぜこんなことをするのですか!?」

私がそう訊ねると、彼女はクスクスと笑い出してこう答えた。

「ふふふ。それこそ愚問だぞ。私の目的を今の貴様に止める術などない。知ったところで貴様に何が出来るのだ??何も出来やしないさ、フフフ。さぁて、そろそろ終わりにしようか。といってもお前にもう力は残させていないだろうから倒し甲斐がないがな」

彼女の手が再び光を帯び始めた。どんどん彼女の手に光が集束していく。
これは…、さっきよりも強い魔力を感じる。

「まぁ強いて言うならば、期待していたフィーアの娘がこのザマとは、全く期待外れもいいとこだ。自分が無力であるせいでここにいる人間も守れないのだからな。貴様のことだ、どうせ逃げようなどと考えておるのだろうが、そうはいかない。せめてもの報いだ、私がこの手で貴様を葬ってやる」

「………」

彼女は私と変わらないくらいに小さいが、今の彼女はとても大きく感じ恐怖を感じる程に私は震えてしまっている。

同じ学び舎で学んだ仲間が、友達が今まさに私を殺そうと目の前に立ちはだかっている。
たまらなく怖い。いつも一緒にいて彼女の笑顔を知っている私からすれば、怖くて仕方がない。それ以上に胸が痛い。苦しい。

どうして、どうしてなの??
友達だって思っていたのは、私だけだったの??
あの時互いに笑ったあの笑顔は嘘だったの??