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秋月かのん
秋月かのん
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第1章  3話  『サイセイ』

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「はぁ…はぁ…中々…手強いな。そうでなければ面白くない」

「はぁ…はぁ…」

「どうした?もしかしてもう終わりじゃないだろうな?それではせっかく私がこれを餌に貴様を呼び寄せた意味がないぞ。しっかりしてもらわないと困るな」

彼女は、怪しげにくくくと不敵に微笑む。
その隣には眠らされたのだろうか、ピクリとも動かず倒れている女の子がいた。

「罪もない一般人を毒牙にかけるなどと…っ!!許せませんっ!!」

「許すも許さないもそんなものは知らぬ。こんな一般人は餌に過ぎぬ。私のターゲットは貴様だ」

「そんなことで…っ!!このような事をしたっていうんですかっ!!!」

「煩い黙れ」

殺意むき出しで押し殺した声を出す少女。
あまりに恐ろしい形相に気圧されてアミーナは後ずさってしまう。

「私は貴様を殺すために来た。理由など知れた事、そんなくだらぬ事は聞いたところで理解などできんだろうからな」

「そん…な…っ!!どうして…どうしてあなたが…っ!!私を…」

「バカの一つ覚えのように言うでない。だから言ったであろう??聞いても無駄であるとな??貴様を殺す、ただそれだけのことだ」

その瞬間、少女の魔力が高まり、それらが光となって手に集束していく。
少女の手が紅く輝き、紅い剣が形成されていく。

「フハハハハッ!!!如月ヒカリの名において、貴様を葬ってやろう!!!光栄に思うのだな。この私自らの手にかけれるその喜び、その身をもって感じるがよいッ!!!」

もの凄い速さで私に迫り、次には大きく剣を振りかぶり鋭い刃を私に切りかかろうとしていた。

「く…っ!!!」

紙一重でとはいかなかったようだ。
彼女の攻撃を予測し、退いたのだが遅かったようだ。
彼女の反応速度が私のを超え、その刃は私の右腕をかすめてしまった。

「いた…っ!!」

つーっと斬り付けられたその傷から血が腕を伝い、ぽたりと地へ落ちていく。
瞬きひとつも許されない。気を弛めばその時は死が待っているのだから。

「あーっははは!!よく避けられたのぅ??だが、そんな甘ちゃんでハンパな気持ちでは命を落とすぞ??憎悪も殺意も怒りも何もかもが足りない、ダメダメだ。私が貴様を殺さないとでも??話し合えば分かり合える??気が変わるとでも本気で思っているのならその希望を絶望に突き落としてやろう」

彼女は何を思ったか持っていた剣を私に向けて投げつけた。
それをかわした瞬間に思い切りお腹に鈍く重たい衝撃を受け、私は蹲ってしまう。
苦痛に悶えながらも顔を上げようとしたが、私の首筋に冷たく鋭い刃が当てられていた。

「私は本気だ。殺し合いに一切の甘えなど許されない、いい加減捨てろッ!!!その甘えが貴様の命取りになると何度言わせれば気が済むのだッ!!!!モノを理解できぬ年でも子供でもなかろう??いい加減に学べッ!!!一思いに殺してしまうぞッ!!!」

「うぅ…うっうぅ…」

アミーナは分かっていたが、その覆せない現実と彼女の言葉が胸に突き刺さり、真実に触れてしまいひどく心にダメージを受けた。

涙が止まらない。早まった動悸も止まらない。
胸がひどく痛い。頭も痛い。心が痛い。
どうして、どうして、どうして??

こんなことになってしまったのだろう。
そんな思いばかり彼女の中でグルグルと巡っていた。

「さて、冥土の土産には十分くらいに説教はくれてやったのだ、そろそろ死ぬか??フフフ、あーっはははははッ!!!!」

「…ッ!!!!!」

アミーナは首に当てられている剣を無防備なその手で掴んだ。
掴んだその手から血がみるみると噴出していく。
気が付けばアミーナの手は真っ赤な血で染まっていた。
見るからに痛々しいその手を少女は見ていた。

その時かすかに耳元に音が届く。耳を澄まさねば決して届く事はないその音を。
気付いた時には既に遅かった。アミーナは呪文を詠唱していたのだった。
膨大な魔力を感知、アミーナの身体全体が光り輝いたかと思えば凝縮した衝撃に吸い込まれ爆発を起こした。

自爆…??いやコレは…!!

「…次は逃がしません。…覚悟してください」

アミーナは無傷。私が斬りつけた傷以外は外傷はない。
おそらく身体全体に魔力で形成した光の障壁を覆い防いだのだろう。
この術は一歩間違えばその身を滅ぼしかねん。
膨大な魔力と空気の圧縮を利用したものだ。

メルトダウンと同じ、使い方次第ではそれ以上のパワーがある。
これを使ったということは、アミーナも本気になった証拠だ。

ヤツも私を殺しにかかってきた。少女はこれ以上もない笑みを浮かべる。
ようやく対等に戦えるのだ。喜びを隠せない。

「あーっはははッ!!!いいだろう、かかってくるがよい、アミーナ・ノヴァ!!己の力の全てを私に見せてみろッ!!そして、もっと私を楽しませてみろッ!!はぁッ!!」

手に光が集束されいき、そしてその手から鋭い刃のような光が放たれる。
それはまるでマシンガンのように連射的で私に迫ってくる。

「くぅ…っ」

私は、やむを得ずレジストをする。

「アハハハ。どうした?守ってばかりではこの私には勝つことなど到底無理だぞッ!」

「…くぅっ!!」

容赦なく降り注ぐ光の刃の雨。私はレジストをせざるを得ない。
確かにこのまま守ってばかりじゃ勝てない。でも、守るのを止めて攻撃に移るのも危険だし…。でも…ッ!!

魔力を最大限まで上昇させ、両手に魔力を集中、そして、籠めるッ!!

「えぇいッ!!」

私の両手から凝縮された魔力の光線が彼女に向けて放たれる。
-だが

「アハハハハ!!甘いぞッ!!」

「……なッ!!」

なんと彼女はそれを片手だけで受け止め、そのままかき消してしまった。
な…なんていう力なの。これじゃ…。

「どうした?もう終わりか?」

「く…ッ!!まだですッ!!」

私は、無造作に彼女に向けて再度、魔力の光線を放った。

「フッ…無駄なことをッ!!」

彼女は再び手をかざし、レジストの体制に入る。
その間に私は、彼女に気づかれないよう素早く呪文の詠唱をする。

「我が放たれし無数の凝縮光よ。かの者に大いなる絶望を与え、そして捕らえよ…」

「何のつもりか知らんが、どっちみち無駄なことだッ!!かき消してくれるわッ!!」

そして、彼女に刻一刻と迫っていく。
そして、間近まで迫ったときにそれは起きた。

「…なッ、何ッ!!」

「これで終わりですッ!!あなたを捕縛しますッ!!」

彼女のすぐ手前で無造作に放った光線は拡散し、逃げられないように彼女を取り囲む。

間に合った…。
そう、なんとか呪文の詠唱が間に合ったのだ。
この呪文は、さっき無造作に放った光線を瞬時に爆発させ分散、そして近くに存在する対象物を取り囲み殲滅する魔法である。

もし、この呪文が間に合わなければさっきと同様にかき消されていただろう。
でも、これなら-

と思っていた矢先であった。

「フッ…。それで私に勝ったつもりか?甘いな!!」

瞬時に彼女は呪文を詠唱し、防御フィールドを展開させた。
そして、それは私の攻撃を見事にかき消してしまうのだった。

「そ…そんな…」