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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  1話  『ハジマリ』

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何だか照れたような笑顔を浮かべながら、俺だけに聞こえるような小声でそう言った。

「ん?ああ、そうだな」

何だ?冬姫のヤツ…。
…あんなにはしゃいだりして。
んで俺たちは、学園掲示板のところまで来たわけだが…。

「やっぱ、いっぱいいるな」

掲示板の周りには、クラス分けを見に来た生徒たちでいっぱいだった。

「人がいっぱいで、これじゃ身動きがとりにくいな。それに一つずつ見て回るのも時間がかかっちまうしよ」

「確かにな。……よし、いつものアレやるか!」

「それしかないな」

「えぇ~!またやるの~?」

おどおどする冬姫。
まぁ、冬姫みたいな女の子には少々難なことだ。
ん?茜か?茜は、表面的には女だが、内面的は立派な漢だからな。心配は無用だ。

冬姫は、去年やった時もこいつだけ中々踏ん切りがつかなくてしどろもどろしてたし。
まぁ、この際、致し方ない。

「でも、今回は突撃隊長のかえでいないぞ?これじゃ戦力不足じゃん」

「そうだよ~!かえちゃんいないと無理だよ~!」

確かにかえでがいないのは痛いな。なんだかんだで結構役に立つし。
まぁ、でもそれぐらい俺でカバー出来るだろ…。うん、楽勝、楽勝だぜッ!!
俺がそんなことを考えていると、

「甘あああぁああぁぁあああいッ!」

「ふごぉあッ!?」

太陽を背にして何者かが俺の腹にとび蹴りをかましやがった。
…くそッ!!誰だッコラ!!

「かえで!?」
「かえちゃん!?」

ふと顔を上げると、そこにはかえでが腕組みして立っていた。

「このアホンダラッ!!…いきなり不意打ちとはやってくれるじゃねーか」

「あはは~!真打は最後に登場するものだよ☆それが格の違いというものだよ☆それに今のは、春斗があたしをほって置いていった罰だ~!!反省しろーいコラー!!」

「ほれ言わんこっちゃない」

茜は、ほら、言った通りでしょ?と言わんばかりに俺を見つめていた。
しかしッ!!悪いが、このままやられ損で終わるつもりは俺には……ないのだッ!!
ディフェンディングチャンピオンの名においてッ!!

「おい、かえで」

俺はポーカーフェイスを装いつつ、ゆっくりとかえでに近づいていく。
そして、

「ん~何…あだっ!何をする!?」

かえでの脳天にチョップを叩き込む。

「うるせー!思い切り腹のみぞにキメやがって~!かえで、貴様を修正してやる!歯を食いしばれ!」

「何だよ~元はといえば春斗があたしを置いていくから悪いじゃないさ~」

「問答無用ッ!!」

「はいはい、ストップ、ストップ~!」

どーどーとストップをかけ、俺たちの間に割って入ってくる茜。

「取り敢えず、かえでも来たことだし、さっさと自分のクラス確認しちゃおうぜ。時間もないんだし。こんなトコで馬鹿やって遅刻したくないだろ?」

「そうだな」
「そうだね」

意外にもあっさりと俺とかえでは馬鹿なことは止め、素直に茜の忠告を聞き入れる。
まぁ、新学期初日からこんなことで遅刻したくないからな。ってかアホだしな。

「んじゃ、俺は、左の方から探すから」

「それじゃ、あたしは、真ん中」

「わかった~。私は、右の方から探してくるね」

「よし、各自…散開ッ!いざ、突撃ッ!!」

かえでの突撃命令で、各自バラバラに散らばり、掲示板の方へ突っ込んでいった。



数分後…。

「あっ!あった…。ねぇ~みんな~来て~!!」

突然、冬姫が俺たちを呼び集める。

「どうした、冬姫?クラス見つかったのか?」

「あっ、ハルちゃん。ほら、見てみて~ハルちゃんと一緒のクラスだよ~。それに茜ちゃんとかえちゃんも~やったぁ~♪♪」

嬉しさのあまりにぴょんぴょんと飛び跳ねてはしゃぐ冬姫。

「ん?あ、ホントだ。やったな、冬姫。今年はみんな同じクラスだ」

「うん♪えへへ♪ホント嬉しいよ~♪」

「ん~見事にみんな同じクラスとは……。これは、何か陰謀のにおいがプンプンするよ~。…これが政治的圧力なのか?!」

「いや、偶然だろ」

っていうか政治的圧力って何だよ。そんなの疑う前に自分の社会性のなさを疑えよ。

「でも、偶然でも全然嬉しいよ~♪偶然さんに感謝しないとね♪」

「そうだな。まぁ、冬姫にとっては、春斗と一緒になれて…だろうがな」

にやりと微笑む茜。

「えぇ~!そんなことないよ~!…確かにハルちゃんと一緒になれて嬉しいけど…。あの…あのあの…ふにゅぅぅ」

冬姫は、顔を赤らめて、次第に声も小さくなっていた。
別に今更、一緒のクラスになっただけで恥ずかしがることじゃないだろうにな。

「あらら~赤くなっちゃって♪冬姫ったらホント可愛いんだから~♪」

「もう~茜ちゃんまでハルちゃんみたいに私をからかって~むぅむぅ!」

「わりぃわりぃ。冬姫の援護射撃のつもりだったんだが、逆効果だったみたいだな」

「もう~別にそんなのいいよ~」

一気に紅潮する冬姫。…何か見ていて微笑ましいのはなぜだろう。

「はいはい。わかりましたよ~。まぁ、クラスも一緒になったことだしこれからもよろってことで」

「え…あ、うん!よろしくね~」

プンプン怒っていた冬姫も、冬姫スマイル笑顔を取り戻していた。

「ねぇ、春斗」

突然、マジな顔をしたかえでが俺に話しかけてくる。
…なんだ、珍しい。

「何だ?」

「時間」

「は?」

かえでは、近くの時計を指差す。
続いて俺も見る。…えーと、今、8時…30分!?
って、8時半じゃねーかよ!!あと、5分でHRじゃねーか。

「おい、冬姫、茜、急ぐぞ!HR始まっちまう」

「あっ!ホントだ~!急がなくっちゃ」

「そうだな。急ごうぜ」

「って、みんな待ってよ!時間教えたのあたしー!」

そして、俺たちは、急いで教室まで向かうのだった。



「はぁ~。やっと終わったぜ」

入学式兼始業式を終えた俺たちは、教室に戻る途中で東館の廊下を歩いていた。

「ホントあの学園長の話は長ぇーよな~。あれは、拷問という他ないよな」

「あぁ、まったくだ」

ほって置いたらいつまでも話してそうだな。
そうだ、言い忘れてたが、暁も同じクラスになった。まぁ、どうでもいいことだが。

「そうか?とても興味深い話だったじゃないか。特に、あの最近、学園長がハマっているというボビーチャンプの1週間エクササイズの話はさ」

「いや…、それはお前だけだと思うぞ」

ちなみにこいつも同じクラスだ。
かえでじゃないが、確かにここまでくると何か陰謀のにおいがするよな。

「しかし、今年の新入生も結構、可愛い娘多かったよな」

「そういえば、お前ずっと新入生の娘の方を見てたよな。今なら言えるがお前の目がやばすぎて新入生の娘たちおびえてたぞ」

っていうか、危険??この俺でも背筋に悪寒が走ったくらいだからな。

「うそ!?マジ!?って、俺そんなにやばい目してたか?」

「まぁな。まるで血に飢えた狼のような目だったぜ。自分じゃ気づかないだろうがな」

「あぁ!俺の女の子だらけのハッピーライフの毎日の夢がああぁああああ!!」

そんなにショックだったのか暁は頭を抱えて悶絶するが如く大きく叫び始めた。