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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章  1話  『ハジマリ』

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「ったく朝からひどい目に逢ったぜ~」

冬姫のデスビンタを喰らうわ、わんわん泣かれるわ……。
誤解を解くために二人に頼んで冬姫に説明してもらい、そんでもって泣き止まない。
冬姫を慰めるのに時間を費やし、そのおかげで朝飯を食べ損ねたわけで……。

「あの…ごめんね。私の誤解でハルちゃんに迷惑かけて……」

冬姫は、さっきのことを思い出したのか、泣きそうな顔でうつむいてしまった。

「別にいいよ。俺の誤解も証明されたわけだし、冬姫もわかってくれたんだろ。なら、気にすんな」

「うん。ありがとう」

冬姫は安心したのか、ホっと胸を撫で下ろしていた。

「しかし、冬姫のビンタはホント効くぜ。また腕を上げたか?あれなら言い寄る男どもを一撃で病院送りだぜ」

「うぅ~。それ褒め言葉じゃないよ~!むぅむぅ」

頬をぷくっと膨らませる冬姫。
ホントからかい甲斐のある奴だな。

「ようっ!お二人さん、はよー!」

-バィイイシンッ!!!

「いッてッ!!って、茜か…。ったく急に出てきて鞄で叩くなよな」

「何言ってる!あたしは気合を入れてやったんだよ。今日から新学期だっていうのにダラ~っとしやがって、もっとシャキっとしろよ」

「うるせ~。余計なお世話だ!お前こそもっと御淑やかに振舞えないのか?女のくせによ~まったく…冬姫を見習え!少しは女らしくなるかもだぞ」

「うっさいな!それこそ余計なお世話だ。でも、確かに冬姫は、可愛いからな~見習う価値はあるかもな」

「え…えぇ!?あ…茜ちゃん、な…何言ってるの~?」

茜の言葉にわたわたして顔を真っ赤にする冬姫。

「そうそう。冬姫にかかれば学園の男子共…いや、全世界の男共を虜にすることも造作もないだろう。冬姫は可愛いからな~」

可愛いを強調して言うのがコツだ。ほぉ~らみるみる顔が赤くなってる。

「ふにゅ~ふにゅうぅぅ~」

恥ずかしさの余りに頭から湯気をしゅーしゅー出しながら一気に紅潮する冬姫。
さらに俺は続ける。

「あぁ~本当に冬姫さんはお可愛いですね~。その恥らう仕草もとても可愛く素敵ですよ~」

俺はどっかの美男子のような顔を演出させ、キラン☆と白い歯を輝かせる。
そして、褒め殺しモード化した俺は、冬姫をこれでもかってくらい褒めまくる。

「ふにゅううううううううううう~!!」

そして冬姫は既に恥ずかしさという名の壁を大きく通り越し、顔は炎よりも赤く、声も唸るだけになり、頭からは高温の湯気を噴出しながら今にも悶絶しそうであった。

…ちょっと、…やりすぎたか。
俺が少し冬姫を気にしていると、

「ほらほら、それくらいにしとけって。もう春斗もそんなに冬姫をからかわない。これ以上やると冬姫、そろそろ暴走しだすぞ??」

「ってお前から始めたんじゃないか!……ふごッ!?」

俺の腹に茜の研ぎ澄まされた刃物ような肘打ちがクリティカルヒットした。

「あ…茜…。テ…テメェ…」

拳でモノを言わすとは……ホント逞しい奴だ…。

「まぁまぁ。ほら、冬姫、もう大丈夫だ。悪いお馬鹿さんはやっつけたからな」

「う…うん。ありがとう」

頬をまだ赤らめたままで困惑した顔でじっと茜を見つめる冬姫。

「あぁもうッ!!ホント可愛いな~冬姫は♪♪」

茜は、もう我慢出来ない!と言わんばかりに思いっきり冬姫に抱きついた。

「あわわわわッ!あ…茜ちゃんッ!?」

冬姫は、再び顔を赤くし、おろおろわたわたしだす。
っておいッ!!…それじゃ逆効果だろ。っていうかわざとだろッ!!



「なぁ、春斗。そういえば、かえでは?」

「んあ?あぁ。朝からいろいろあったし、時間もなかったし、起きてなかったみたいだったから置いてきたぞ」

っていうか、あのときは他のこと考える余裕もなかったからな。
…無理もない。

「あんたはまた…。そこは起こしてあげようぜ。かえで怒るぞ~??」

「知ったことか。どうせまたゲームやりすぎて夜更かししたんだろ。自業自得じゃね?」

確か昨日、ネトゲーがどうとか言ってたしな。
俺は参加しなかったけど…。

「あんた一応、かえでと幼馴染だろ…」

「あ…あのね、ホントは時間あったんだけど…、私がね…あの…その…変な誤解しちゃってね…それで時間なくなっちゃったの…」

冬姫は控えめに頬を赤らめてフォローに入ってくれたようだった。

「だ…だからね…、ハルちゃんのせいじゃないんだよ」

「そうだったのか~。それならしょうがない」

冬姫の話を聞き終わると、さっきまでの茜とは一転して納得していたようだった。
…って、ちょっと待てや。

「俺の時とはえらい対応が違うんだが?」

「だって冬姫は、可愛いんだもん♪春斗は可愛くないし」

理由になってねーよ!それッ!!

「…まぁいい。そういうわけだ。わかったか?」

「でもホントにぃ?本当は冬姫と一緒に登校したくて置いてきたんじゃないか?」

意味深ににやりと怪しく微笑む茜。

「えぇ?!」

そして、その言葉に驚く冬姫。

春斗「違うわい!!そんな気になるならミナか明日香に聞いてみろ。あいつらのおかげでこうなったんだからな」

この俺への誤解を一発で解いてくれることであろう。

「ん?ミナって誰だよ?」

「そうだったね~茜ちゃんは知らなかったね~。ミナちゃんは、昨日引っ越して来た娘なんだよ。私と明日香ちゃんも昨日お友達になったんだよ~。だけどハルちゃんは、昔からのお友達さんなんだ~」

「へぇ~。昨日そんなことがあったのか(ニヤリ☆)」

何だか嫌な予感がする。
茜のこのいかにも悪戯を企んでいるかのような顔はよ。
なので、俺は動じる様を見せずに冷静に答えてみせる。

「ま、まぁ、そういうことだ」

「あたしもその娘に会ってみたいな」

「大丈夫だよ。ミナちゃんも私たちと同じ学園に通うって言ってたからきっと会えるよ~」

「そうなんだ。それは、楽しみだ(ニカッ☆)」

お前の楽しみにしているのは会ってから先にある事なんだろ??
何を企んでるのやら。先が思いやられるぜ。



走行しているうちに学園に到着した俺たち。

「うわぁ~人がいっぱいだね~」

体育館付近には、新入生とその保護者でいっぱいだった。

「今年も多いな~新入生」

「ホントな~。まぁ、一応この学園人気あるみたいだしよ。それにほら、この学園ってエスカレーター式だからなぁ」

俺たちの通う虹ヶ坂学園。
初等部から大学部まである大きな学園だ。
さっき茜が言ったが、この学園は初等部からエスカレーター式。

普通に勉強していれば進級でき、普通に生活していれば簡単に卒業できるなんとも自由な
学校だ。学園の校風も生徒の自由性を重視している。
このおかげで初等部から入学する者もここ近年増加しつつあるのだ。

そしてこの学園に入学した生徒は、大抵、大学部までこの学園に通うことになる。
まぁ、俺の場合は、単に楽だと思ったから入学したんだがな。

「それより、クラス分け発表見に行こうぜ」

「そうだな。今年は冬姫とも一緒になりたいよな」

「うん。一緒になれるといいね~!ねぇ?ハルちゃん?」