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Bhikkhugatika

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益荒男


 男女の情はうつろうもの。悲しくもはかないものだ。およそ生起する性質あるものは滅する性質あるものだが、恋する男女というものは、自分たちはあらかじめ定められた運命によって結ばれ、互いの情愛は不滅であると思い込むものだ。その情愛が変滅してしまったなら、いやはや、彼らの心が破けてしまっても不思議ではない。
 君はいままさにその渦中にいるのではないか。君のような純朴な男が、大洪水にひとり州に取り残されたかのように悲しんでいるのを見るのは、私にとっても耐え難いことだ。
 しかし私は君を励まさなければならないから、あえて伝えたい。心優しき友よ、君が立っているその州こそ君の拠り所だ。いま君は君自身で立っているではないか、彼女に支えられることなく、君が丹念に積み上げたその思慮深い信念の州の上に。
 いわんや私は、いま君の心にどんな嵐が吹いているか、知らぬわけではない。けだし南極海の絶叫する60度とは、君のその心のようなありさまであろうね。
 それでもなお、君が自らの不幸へのこだわりを乗り越え、皆に分け隔てなく笑いかけるあの穏やかな好漢にたち戻る日が遠くはないことを、私は一向に疑わぬのだ。私の知るかぎり君こそが、当世には数少ない、益荒男のひとりなのだからね。
作品名:Bhikkhugatika 作家名:RamaneyyaAsu