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数式使いの解答~第二章 雪と槍兵~

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《第二幕》槍の戦い


 翌朝、ローレンツとミリアの二人は村の中央、昨晩長老が知らせを張り出すと言っていた掲示板の元へと来ていた。
 時間としては早いが、田舎の寒村にとってはちょうど外に出る時間だ。人通りは少なくない。
 だが、掲示板を見て足を止める者、家に引き返したり慌てる者はごく一部だけだ。
 そんな様子にミリアは、
「何でみんな避難をしないの? いつロピタルに襲われるかわからないのに」
 と、思わず呟く。
 ローレンツが、それは、と言いかけたところで、横から声がかかった。
「それは、ここが自分の村だからだ」
 声の方を向くと、そこには一人の男が立っていた。
 顔はマフラーと雪眼鏡、フードのせいで見えないが、耐寒用の服の下に着ている鎧が、戦いを生業にしていることを無言で語る。手に一本、背中に一本の槍を持っており、背は高く細身だ。
「どういうこと?」
 ミリアが尋ねると、
「みんな、ここを出たくないんだ。この村に住んでる奴のほとんどが、先祖代々この村で生活してきたんだからな。思い入れが深いのさ。……ロピタルが来る程度なら、村と一緒に一蓮托生、ともに死んでやろうってな」
 自嘲気味に鼻で笑いながら答える。
「そんな!? 死んじゃったら意味ないよ!」
 厚着兵士の言葉に大きく反応したのはミリアだった。
 彼女の強い語気が意外だったのか、兵士は少々面食らいながらも言う。
「お嬢ちゃん、生きるより死にたいときだってあるんだ。死ぬことイコール無意味では、決してないんだ。数式じゃないんだから、な?」
「でも、今はそんなときじゃ――」
「それを決めるのは、少なくとも嬢ちゃんではないよ」
「………………」
 ミリアの視線が下を向く。
 すると兵士はバツが悪そうに頭をかき、
「いやぁ、まぁ、その……、な? みんな色々と思うところがあるのさ。わかってやってくれ」
 いい終えると後ろを向き、この場を後にしようとする。
 が、ローレンツが一言、
「なぁ、……お前はどうするんだ?」
「オレは――恐がりだからな。きっと逃げ出すさ」
 肩をすくめると、兵士は雪の中へと姿を消していった。