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数式使いの解答~第二章 雪と槍兵~

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「……ってことが朝あってな。シャノンはどう思う?」
 ローレンツは、テーブルを挟んで向こうに座るシャノンにそう訊いた。
 もうすでに時間は夜。夕食も済ませた後だ。イスに腰掛け、暖炉のぬくもりを感じつつ雑談をしていたところ、話の流れから今朝のことを話すに至った、というわけだ。
 長老とミリアの姿は部屋にない。長老は早々に、寝る、と言って自室へと向かい、ミリアは今朝のことをまだ気にしているのか、部屋へと引っ込んでしまった。
 部屋にはローレンツとシャノンの二人のみだが、ローレンツはそのことを微塵も気にしていない。それに対してシャノンはどこかそわそわしている。
 そして、彼女はローレンツに質問されていることを思い出し、あわてて返事をした。
「……え、あ、もしかして、その人二本の槍を持ってませんでした?」
 微妙に挙動が不自然であったが、ローレンツはさほど気にする様でもなく、ああ、その通りだ、と答えた。
「じゃあきっと、ヘルメスさんですよ。ヘルメス・ヴァン・ヘルムホルツさんって言って、一年くらい前に越して来た人です。なんでも以前は数式国家アインシュタインで、政府軍の兵士だったみたいで。そのときは"二筋の光(デュアル・ライト)"ヘルメス、なんて仰々しい名前で呼ばれてたとか。今は経験を活かして村の警護していただいてます」
「どうりで」
 ローレンツのつぶやきにシャノンは怪訝そうな表情を浮かべる。ローレンツはそれに気づくと、なんでもない、と言ってはぐらかした。

 一夜が明けた朝――。
「長老様!」
 騒々しく現れたのは、慌てた様子の男だ。ノックもそこそこに家の中へと駆け込んでくることから、よほどのことがあったらしい。
 彼を迎えたのは、長老、シャノン、ミリア、ローレンツの四人だ。八つの瞳は、いったい何があったのかと驚きの色に染まっている。
「その、外からいきなり、えーと、兵士の方が……!」
 要領を得ない彼を落ち着かせるかのように、長老が口を開く。
「どうしたんじゃ? 外から何が来たのか、どうなっているのか、ゆっくりでええ。落ち着いて話すんじゃ」
「す、すみません。すう、はあ、すう、はあ。……外からジャベリンペンギンの群れが襲撃を! 現在ヘルメスさんが応戦中です!」
「なん……じゃと!?」