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柵の向こうの彼女

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相変わらずの柵の向こうの後輩と僕


「先輩、車欲しくありませんか?」
 彼女の質問はいつも唐突である。こちらが話している内容などさも関係ないとでも言うように別の話題に入る。とんだ自由人だなと思いながら、僕は床屋が暑さにいらいらしてついに人を殺しそうになっている小説から目を上げる。
「いや、その前に免許が欲しいな。でなければ捕まる。」
「いやまあ、そうですけど。」
 彼女は相変わらず柵の向こう側で、こちらに向かって話しかける。肩口あたりまで切られた髪が風になびき、さらさらと流れていく。そろそろ傾いてきた赤い日に照らされて、むっと頬を膨らませて、僕に話題を提供している。
「そういうことなんですけど、そういうことじゃないんです。」
「では、どういうことなんだ。」
 僕が、そんな風に言うと彼女はますます頬を膨らませて、
「というか、分かってますよね? 」
と言ってきた。もちろん、と僕は意地悪く答える。
「とどのつまりはあれだろう。車で何をするかだろう。」
「ほら、やっぱり分かってるじゃないですか。先輩、意地が悪いですね。」
そう彼女が、なんとも不機嫌に言うものだから、少しばかり笑いがこみ上げる。そんな笑いをかみ殺して、彼女に形ばかりの謝罪を言う。
「いや、すまない。君をいじめるのはとても楽しくてね。」
「やめてくださいよ、そんな楽しみ方。」
「病み付きになるんだよ。」
 勘弁してくださいよ、と彼女がほとほと困り果てた。ここら辺が潮時であろう。
「まあ、なんだ。車が欲しいかと言われれば、別に、かな。」
「ええ、なんでですか。」
「さして必要性を感じない。」
「そんなことないですよ、めちゃくちゃ必要じゃないですか。」
 そう彼女は、僕のほうに身を乗り出して力説する。
「だって、車があったらもっと遠くへいけるじゃないですか。」
「ガソリンとお金が続く限りな。」
「先輩、夢がないです。」
「君が夢見がちだからね。」
 そう、お決まりのやり取りをして、彼女は、そんなことないですよ、と少しばかりの苦笑を浮かべる。
「でも、いつか行ってみたいんですもの。」
「ここではない場所? 」
「私が私でいられる場所です。」 
「それは、」
 相変わらず観測不能だね。と言うと、
「でも、私には感じられますから。」
 そう彼女は笑った。そこで下校のチャイムが鳴る。どうやらこれもお定まりの会話なのだろう、そんなことを思いながら、彼女と別れを告げた。


作品名:柵の向こうの彼女 作家名:katariya