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宇宙を救え!高校生!!

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 それでも止まらなかった僕の暴走に、大人たちはネットを使い、まさに獣を捕獲するかのようにやっと取り押さえたのだ。



 気がつくと、僕は見知らぬベッドの上に寝かされていた。

 白い天井に白い壁、窓はなく、ベッドも含めて総てが白い部屋。

 どの位眠っていたのか分からなかったが、起き上がると体中のがギシギシと痛かった。

 ゆっくりとベットから起き上がると、一つだけ有るドアのところまで歩きノブに手を掛けたが、外側か鍵がかかっていて開かなかった。

「あたまがいたい・・・・・・」
 額には包帯がまかれていて、頭の中心がズキズキと傷んだ。

「ぼくは・・・だれ・・・・・・・・・・」

 何も思い出せなかった。

 自分の名前も、歳も、住所も。託児所で起きたことだけではなく、それ以前の『過去の記憶』もほとんどすべて失っていたのだ。

 記憶喪失だった。

 医師の診断は、あまりに辛い記憶から自分自身を守るために記憶を封印した、というものであった。

「ここ・・・どこ? だれか・・・・・・パパ、ママ?」
 ドアをドンドンと叩きながら両親を呼ぶ。両親がいた事は覚えているのだか、名前も、顔も、思い出そうとしても、その部分だけがまるで靄がかかったように思い出せなかった。

 暫くすると、白衣を着た優しそうな中年男性と、黒く大きなメガネを掛けた若い女性が、ゴロゴロとワゴンを押しながら部屋に入ってきた。

「こんにちは、大和君。ええと、自分の名前、分かるかな?」
 ペン型のライトで僕の瞳を照らしながら覗きこむと、メガネのおじさんは優しい声でそう尋ねた。

「ううん・・・・・ボク、大和っていうの?」
 ベッドの縁にちょこんと座り、もじもじしながら僕は聞き返した。

「そう。君の名は大和君、飛鳥大和君だよ」
 医師? らしきその男は、検査の手を緩めて僕の顔を暖かく見つめた。

「ねえ、ここはどこなの? ボク、おうちにかえりたいんだ」

「えーとね、大和君。ここは病院の中なんだよ」
 男は、最初の質問だけに答えた。

「ボク、びょうきなの?」
 病院と聞いて、僕の表情は曇った。

「いや。病気じゃないんだよ。検査のためにちょっとだけ入院しているだけだから」

「よかったー」
 それを聞いてほっとしたのか、すぐに晴れやかな顔になる。

「けんさはいつおわるの?」

「うーん、もう少しかかるかなー」

「それがおわったらおうちにかえれるの」

「・・・・・そうだよ・・・・・」
 男は、優しく微笑むと僕の手を握った。

 暖かく、大きな手だった。

「おじちゃんは、ボクのパパなの?」

「・・・ちがうよ。おじちゃんは大和君のパパのお友達なんだよ・・・」
 感情を押し殺すように男はいった。

「ふーん・・・じゃあパパとママはどこなの?」
 男は僕のその質問に、どう答えるべきか迷っていた。

「おむかえにきてくれるかな?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 男は、何かを考えていたが、大きくうなずき僕の頭をそっと撫でると言った。

「大和君が元気になったらきっと迎えに来てくれるよ」



 男は嘘をついていた。

 包帯も取れて、すっかり元気になった僕は、外の景色が見える大きな窓の有る、明るい部屋に移されていたが、何日待っても両親は迎えに来てはくれなかった。

 代わりに僕を迎えに来たのは、天王寺財閥の人間だった。

 身寄りの無い僕の引き取り手として、シャトル便の運航会社の母体であった天王寺家が名乗りを上げたのだ。被害者遺族に対する償いの意味も有ったとは思うが、天王寺家の当主と僕の父が親友同士であったことが大いに関係していた。

 こうして僕は天王寺家で、この後、中学三年まで暮らすこととなった。

 莉子とは、小学校へ進学した時に初めて出会い、友達になったのだ。

 失われた過去の記憶は少しずつ蘇り、そのほとんどは小学校時代に取り戻していたが、父と母の記憶だけは相変わらず曖昧なままだった。



作品名:宇宙を救え!高校生!! 作家名:葦藻浮