小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

エイユウの話~冬~

INDEX|69ページ/80ページ|

次のページ前のページ
 

「くれぐれも、無理はしちゃダメよ」
 学生という身分を脅かしてまで行動をとれば、助かったとしてもキースは救われない。絶望し変わってしまったら、それは彼を助けたことにはならないだろう。それを考えたラジィからの忠告に、二人は同意する。キサカに至っては、
「そんなの言われるまでもねぇけどな」なんて、らしいオマケまでつけてきた。
 これに関して、珍しくラジィは怒らなかった。本心を言うと、キサカに対しては信用がある。彼の判断力は見事だし、たぶん一番キースの事を解っているだろう。年齢なども少し反映しているのかもしれない。
 しかし、アウリーは違う。彼女は時になりふり構わないところがある。キースのためならなおさらだ。ラジィやキサカとは違い、キースが助かれば何でもいいという、彼に似た自己犠牲的思考がある。ラジィが一番懸念しているのは、そこだ。この間流の導師が彼女に言った「導師の子供だからと調子付くな」という言葉。贔屓や差別ではなく、あれは忠告だとラジィは考えている。ただでさえその立場から孤立してしまっているのに、これ以上出しゃばった動きを見せれば、原因が何であろうと、彼の言った理由で彼女まで苛められかねない。繰り返すようだが、それではキースを助け出しても、「助けた」ことにはならないのだ。犠牲は一時的で、最低限のものではなくては。
 しっかりと指切りまでして、三人は散っていった。


作品名:エイユウの話~冬~ 作家名:神田 諷