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海野ごはん
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十六夜(いざよい)花火(前編)

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井田の家は大きかった。昔からの大きな家にさらに増築していた。
国道に面した側には井田写真館のスタジオがある。一博たちは裏の駐車場に車を止めると自宅の玄関に回った。
一博の心臓は早打ちしていた。一瞬、逃げ出したい気にもなる。美香の顔を見るといつもの顔だった。意を決して自分の家のドアを開けた。

ドアの音を聞いた加奈子は「はぁ〜い」と返事をした。そして玄関まで出迎えた。
美香も加奈子も普段通りの顔をしようとしたが、こわばっていた。
一応笑顔らしきものをちらりと見せるが、多分それは笑顔になっていなかったかもしれない。
「待ってたわ」加奈子が切り出した。「奥にどうぞ」と言った。
一博は自分の家なのに、自分の家じゃないような気がした。緊張していた。
「何がいい?コーヒーでいい?」加奈子が聞く。
「あっ、なんでも・・・」
美香は加奈子の応対に戸惑いながら返事をした。
ソファーに座ると横に一博が座ってきた。少し安心した。どうやら一博はこちらの味方のようだと美香は思った。
テーブルの上には調査会社の封筒があった。美香は取り出し中を見た。
いかにも不倫ですというような写真の撮り方が気に食わなかったが仕方ない。隠し撮りで取られたのは初めてだ。
あまり写真映りがよくない。鏡の中の自分はもっと若いはずだった。こうやって見ると秘密の現場写真は自分の年齢の秘密まで写されてるようで裸にされた気分だった。
すぐ、写真を放りやった。ちょっと腹が立った。


加奈子はお客様の接客のようにコーヒーを作り運んできた。いつもより化粧が濃いのは対抗心の表れだろうか。女の戦いはすでに始まっているのかもしれない。美香も臨戦態勢に入っていた。
「ごめんね、急に呼び出したりして」加奈子が言う。
「加奈子、先に謝っとくわ。こっそり盗んだのはあたしの方だから・・・ごめん」
美香は頭を下げた
「悪いのは一博だから気にしなくていいわ。でも、一応受け取っておく」
「・・・・」一博は二人の会話に注意深く聞き耳を立てるが、居心地は最高に悪かった。
一博と美香が座るソファーと、一人で加奈子の座るソファーの間にはテーブルがあり、その上には調査会社の写真と場を紛らすような3つのコーヒーカップがあった。
加奈子も写真は一度見たがそれ以上見たくなかった。
一博は見られたくないものを見られないように、テーブルの上にある秘密の写真を調査会社の袋に入れなおした。美香と加奈子が喋らない空白の時間が長く長く感じ、こんなにも1秒が長いのかと一博は嫌に思った。

「あのさ、今日ここに美香を呼んだのは、これからの事を話したいから呼んだの。別に罵倒する気はないわ。一博を返せとも言わないわ。あんたたち二人が好きあった仲に邪魔したいわけじゃないの」
「・・・・」
「・・・・」二人は悪いことをした生徒が先生の言うことを聞くように神妙に聞いた。
「多分こうなるだろうと思ってたわ。一博も美香も寂しがり屋でしょ。二人とも誰かがそばにいて優しくしてくれないとすねるタイプでしょ」
加奈子が言うのは悔しいが当たっていた。だけど、この落ち着きはなんだろう・・・
「一博はご存じのとおり浮気癖の多い男だと知ってるよね。美香、それでもいいの?」
「‥‥」
美香は黙っていた。それは昔の話でしょ・・と言いたかった
「ずいぶん前から私はあきらめていたわ。最近は相手してなかったというのが本当。どうにでもして頂戴って感じだった。この前の旅行の時、あんたたちキスしてたでしょ」
「‥‥」
一博はまた一つ秘密をばらされ、さらに居心地が悪くなった。見てたのか・・・
「別にそれもいいわ。嫉妬してない」加奈子は嫉妬と言って、いや少しあったのかなと思い出した。
「正直に言うけど、一博とうまく行ってなかったから、この機会に別れようと思うの」
一博は加奈子の顔を見た。そうなるであろうと予想はしてたが面と向かって言われると心が痛い。
「で、一博に聞きたいんだけど、あなたはどうしたい?」
「えっ、俺・・・・まだ、考えていない」
「何よ、それ。美香とは遊びだったの」
加奈子が少し大きな声を出して責めた。
「いや、そういうわけじゃないが・・・昨日の今日でまだ先のことを考えてなかった」
「じゃ、今、考えなさい」加奈子は一博にぴしゃりと言った。