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海野ごはん
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十六夜(いざよい)花火(前編)

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「あのさ加奈子。質問していい?」
美香は加奈子の一方的な上から目線が気に食わなくなり口を開いた。
「いいわよ・・・」
「加奈子は一博が間違いを犯すのを待ってたの?」
「・・・・・」
「それっておかしくない。一博の悪い性格知ってるのなら治してあげればよかったじゃない」
「昔は努力したわ」
「奥さんだったら、ずっとするでしょ」
「知ってるでしょ、この人は軽薄でちゃらんぽらんなのよ、女に関してはね」
一博は反論できなかったが、言い方にむかつく。
「よく、わかってないわ。さっき言ってたでしょ。この人は寂しがり屋なのよ。私もだけど」
「それだったら、不倫しても許されるわけ?」
加奈子が閉め出すように言う。
「いいえ、ちがうわ。だけど・・・」
美香は不倫という言葉を持ち出されると弱い。

「一博が決めようが決めまいが、あんたたち一緒になりなさいよ。わかってるわ。私みたいに一方的にものを言う人間じゃ男の心を癒してあげれないのは。その点、美香はよく男のことを考えてあげれる。いいじゃない。一博、一緒になりなさいよ」
「別にお前から命令されるものじゃないよ。初めからそのつもりだよ。美香と一緒になろうと思ってんだ。そんな言い方やめてくれ」
初めて一博が意思を持った口を開いた。
沈黙が走った。


「悪かったわ。大きな声出して。でも・・・非難していいよね少しは・・・」
加奈子が言った。
「加奈子ごめんね・・」美香が謝った。
「いいのよ、うらやましいわ。この歳でまた人を好きになるなんて」加奈子の元気がなくなった。
加奈子も美香も一博も沈黙した。


「今日呼んだのは私もけじめをつけたかったの。一博と別れる代わりに、あなたたち一緒になってくれない。そのつもりなんだろうけど別れないって約束してくれる」
「どうしたんだよ・・・」一博が言う。
「せっかく初恋同士で一緒になれたんじゃない、なったらいいわ・・・」
「知ってたの?」美香が聞いた。
「みんな知ってるわよ。クラス中」
「どうしたんだ、おまえらしくないな」
一博は泣き出しそうな加奈子を見て困惑した。

「美香・・・一博のこと好き?」
「・・・好きだけど・・・」
美香も妙な展開に困惑している。
「一博は?」
「・・・まあ・・・」
「好きなの?」
「ああ、好きだ」
一博と美香は顔を見合わせた。加奈子は何を言いたいのだろう。
「絶対一緒になってね、じゃないと許さないから・・・」
「???」


「私、健ちゃんと一緒になる・・・」いきなり加奈子が言った。
「えぇ〜〜っ・・・」
美香と一博は加奈子を見て驚いた。
「なんだよ、いきなりそれ。お前たちもできてたのか?」
「違うわよ。不倫なんかしないわ」
「じゃ、どうして・・・?」一博が気色ばむ。
「私は健ちゃんが好きだから・・・」
「はぁ〜〜〜?」
「いいじゃない。あんたたちだって好き同士で一緒になるんだから・・・」
「そ、それって、健三も知ってるの?」
「ううん、ぜんぜん。そんな話もしてない」
「なんで一緒になれるんだよ〜」
美香は加奈子の言葉に驚いた、まさかまさか、あの健三と・・・。
それに、彼とまだ付き合ってもいない筈、どうするんだろ・・・。
「加奈子、私、まだ一博とのこと健三に話してないよ」美香が言った。
「・・・」
「まだ、何にも解決してないよ・・・」
確認するように美香が言った。
「一博と一緒になるんだったら美香は別れるんでしょ」
「まっ、そりゃそうだけど・・・」
変な展開になってきた。
「健ちゃん一人になるじゃない・・・可哀そうじゃない」
「加奈子、健三の事が好きだったの?」美香が聞いた。
「・・・・うん」
「えぇ〜〜〜〜」美香はあんな男のどこがいいんだと思った。
しかし一博の事もあるし人に言えないか・・・。
隣の芝生は青く見えるのだろうか。


「加奈子、実は昨日、健三に二人でいるとこを見られたんだ。そして夜帰ってこなかったらしい」
一博は自分から正直に話した。
「多分、健三はあの顔からして疑ってるようだ」
「まず、やっぱり私が正直に健三に話すわ」美香が言った。
「なんて?」加奈子が聞く。
「・・・・・」なんて言えばいいんだろう。
一博と一緒になるから別れますと言えばいいのだろうか。いきなり突拍子もなさ過ぎて現実感がない。というか、もう自分と一博が一緒になるってことの方が勝手に決まりかけていて、本当はこちらの方がよっぽど重大のような気もする。
なんで、こんな展開になるんだろう。自分の予想とは違うと美香は思った。

「健ちゃんには私から言ってやろうか」加奈子が言った。
「えぇ〜、なんて言うの?」
「美香は一博と一緒になるそうよって・・・」
「いきなり〜〜?それで、だから私達も一緒になろうって言うの?」
「・・・・まずい?」
「…うまく行くわけないでしょ・・・」
「そうよね・・・冗談よ・・」
どこまで本気で加奈子は言ってるのかわからない。

「やっぱり私がちゃんと話さなきゃいけないわ。何年も一緒だったんだもん」美香が言った。
「大丈夫か」一博が言った。
「・・・・わからない。だけど、大事なことだもん」
美香は健三のことを想うと気が重くなった。


不倫の関係をすでにした時から健三の事は捨てたはずなのに、別れるつもりで家を見たり掃除もしたけど愛着というのが邪魔をしてくる。
子供のことだってある。越えなければならないハードルがたくさんある。  
いっそ、健三が加奈子と浮気してくれたらあっさり加奈子のように別れられたかもしれないと美香は思った。えっ、待って・・・もしかして加奈子はそれを待ってたの? 
美香は加奈子の顔を見た。

そういえば加奈子は浮気をされたにもかかわらず、すっきりとしている。だけど事実は、私が先に彼女の夫を横取りしたんだ。あの時の夫婦交換は加奈子の策略か・・。
そう思ったが言える筈なかった。非はすべてこちら側にあるのだ。
意外と加奈子は生きる術が上手なのかもしれないと思った。