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四神倶楽部物語

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 だけれども単に頑張ってみると張り切ってみても、伸びがどこまでもゼロに収斂(しゅうれん)してきていた会員数、それをいきなり30パーセント増すなんてやっぱり難しいです。今までの常識を破るような超面白いというか、魅力ある企画を生み出さないと、絶対に無理だろうと考えていました。

 そのためには日常の生活の中でもピリピリと感度を上げ、かつ何にでも好奇心を持って暮らしていくべき、そうなのです、その土壌から生まれてくるフレッシュな発想が必要だと思い至ったわけです。
 自称・オフィスの星、起死回生で、高級ブランドの志向が強いお客さま向けの新企画を練り始めていました。そんな状況下にあって、最初の奇々怪々な出来事が起こったわけです。

 そう、あれは……、何かあっと驚くようなアイデアがないかなあ、といろいろ考えを巡らせながら夕暮れの街を歩いていた時のことでした。学生時代の友人の槇澤良樹(まきさわよしき)にばったりと出逢ったのです。

「ヨー、久し振り」
 懐かしくって、積もる話しもあります。そのまま連れだって飲みに行きました。槇澤は学生の頃はまじめな男子学生で、勉強もよくできた頭の良いヤツです。それにしても、ホント、久し振りでした。それで昔話に花が咲いたわけですが、今の身の上は互いにサラリーマン。最後には、それぞれの会社の愚痴を吐き出し合って、慰め合うような話しの展開になりました。私もアルコールの勢いに任せて、ついつい性懲りもなく、いつもの調子で吐いてしまったのです。

「会員数を増やすためには、斬新な新企画が必要なのだけど、上は早く、あっと驚くようなアトラクティブなものを出せって攻めてくるだけなんだよ。だけどそう簡単には妙案なんて思い付かないよなあ」

 ところがですよ、槇澤はこんな私の愚痴を聞いて、その後何を思ったのか突然に訊いてきたのです。
「龍斗よ、……、お前、人を殺したことはあるか?」って。

 これにはびっくりしました。たとえ飲んだ勢いだといっても、槇澤がなぜそんなことを、唐突に話し出したのかがわかりません。
「えっ、槇澤、それってお前、誰かを殺してしまったということなのか?」私はビールのグラスを持ったまま、思わず聞き返してしまいました。すると槇澤はビールをぐっと呷(あお)って、なんの躊躇(ちゅうちょ)もなく言い放ったのです。
「ああ、結果としてね。そうなってしまったんだよなあ」と。

「おいおいおい、槇澤、お前大丈夫か? 今からでも自首した方が良いんじゃないか」
 私は友人の身が心配で、とりあえずそう薦めたのですが、ホントその時に酔いがいっぺんに醒めてしまいましたよ。だけど槇沢はまったく動じていないのです。

「世の中には、不思議なことってあるものなんだよなあ。これを縁(えにし)というか、宿命というのか、よくわからないのだけど」槇澤は独り言を漏らして、その後、その縁というか、宿命というのか、その物語をぽつりぽつりと語り始めたのです。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊