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四神倶楽部物語

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 あれは、もう1年ほど前のことだったかなあ。そう、俺がこの町へ転勤して来た時にね、アパート探しをしたのだけど、なかなか高くって、見付からなかったんだ。
 なかなか良い物件がなくってね、ホント困ってたんだよなあ。だけどそんな時に、ラッキーに見付けたんだよ、市価より20パーセントオフの賃貸を。

 それは町外れの不動産屋にあった物件だったのだけど、もちろんすぐに俺はそれに飛びついたさ。それで不動産屋の係の人に、現地確認で、見に連れて行ってもらったんだ。
 間取りは2DK、単にそれだけの物件だったのだけど……。

 だけどそれがねえ、結構手入れが良くってね。それに交通の便も良いし、見晴らしも良い。申し分なかったんだよな。そこで俺はすぐにここにしようと決めたんだ。だけどね、その不動産屋の担当者がぼそぼそと呟いたんだよなあ。「槇澤さん、一つだけ知っておいて欲しいことがあるのです」ってね。

 俺は即座に「知っておくべきことって、何なのですか?」と聞き返したらな、すると担当者は「あれを見て下さいよ」と目配せをしてきたんだ。それで、その方向を見てみると、それが貼り付いてたんだよ、そこに。なあ龍斗、それは何だと思う?

 私は、槇澤のこんな持って回ったような話しに少しいらっときて、「何がって? 亡霊でも貼り付いてたんだろ」とギョロッと睨み付けてやりました。一方槇澤は、私のこんな大人げない反応が面白かったのか、くすっと笑い、おもむろにあとを続けました。

 龍斗よ、まあ結果としては、それに近かったかな。教えてやろうか、それってな、それは――扉だよ。
 ホテルに、そうだな、特に海外ではちょっと大人数で宿泊する時、隣り合った二部屋を取るよな。その連続した部屋間にあるだろ、隣の部屋へ繋がっている扉が。いわゆるコネクティング・ドアーというやつが。そのコネクティング・ドアーってさあ、俺はこの世の中にはたくさんあることを知っていたから、特に驚かなかったのだけど。不動産屋の担当者がね、訊いてもいないことをまたペラペラと喋ってきたのだよなあ。

「あの扉、古代蝶鳥(こだいちょうとり)の模様が入っていまして、まあ、禁断の扉とでも言うべきなのでしょうかね。あまり開かない方が、よろしいかと思いまして、一応注意ですが」ってね。

 突然気を付けろと言われてもな、そんなことコネクティング・ドアーの常識だよな。どちみち二重扉になっていて、こちらはこちら側のロックを外さなければならないし、隣は隣で、向こう側のロックを外さない限り、部屋どうしは繋がらないだろ。だから、こっちが外さない限り、ぜんぜん危なくないし、大丈夫に決まってるよな、そうだろ。とにかくその時、俺は開けないことにメッチャ自信があったんだよなあ。


作品名:四神倶楽部物語 作家名:鮎風 遊