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ひとりぼっちのジョージ

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ロンサムジョージ
 (ひとりぼっちのジョージ)

 「ガラパゴスゾウガメ」
  分類;爬虫類・亀目・陸亀科

  生息地;ガラパゴス諸島

 特徴;甲長1〜1.3m、非常に長寿で飼育下において150歳の記録を持つ個体も存在する。ガラパゴス諸島にのみ生息し、諸島内の各島によって甲羅の形や模様が異なる事により15の亜種に分類される。だが食肉としての乱獲、又は人間によって持ち込まれた 家畜等の被害により絶滅寸前に追い込まれ、現存するのは11亜種である。
 現存する亜種の内でも数頭しか生存を確認されていない亜種もあり、そういった亜種は諸島内にあるチャールズ・ダーゥ イン生物研究所の職員によって特に入念に保護されている。
 フェルナンディナ島の亜種の最後の一頭の場合は、「ジョージ」 と名前をつけられて、現在は研究所内に収容され、繁殖プログ ラムに従って他の亜種とのペアリングが試みられている。しかしこういった試みも、個体数が数頭になってしまった亜種に対しては、その効果ははなはだ疑問の残るところであり、単に気休めにすぎないという見方もあるが、その方がより的を得ているであろう。
 「ジョージ」を例に取れば、普通ガラパゴスに生息する生物は人を警戒しない事で知られているが、彼は人間ばかりではなく他亜種のゾウガメさえ自分に寄せつけようとはせず、この為彼は「ロンサムジョージ」(ひとりぼっちのジョージ)と研究所の所員達に呼ばれ、彼が100才近い老齢である事もあり、恐らくこの亜種もジョージを最後にまもなく絶滅するであろうというのが研究所内での一般的な見解である。



    ジョージへ。

  ジョージ、君にとって20世紀とは、
  一体なんだったのだろう。
  君はどれくらいの間を一人で過ごしてきたのだろう。
  今となっては、誰も君の孤独に触れる事は出来なくなってしまった。
  君は覚悟をした様だ。
  やがて君は他の多くの伝説の生き物と同じ様に、
  私達の書物の中にしか存在しなくなる。
  君の息吹、君の体温、君の感触、
  そういう本当に意味のある物はこの地球から永遠に消え去る。
  私達は又、兄弟を一人失う事になるんだろう。
  同じ母によって育まれた兄弟を。
  君の代わりに私達が手に入れるものって、一体何だろう?
  だけどそんな事は君にはどうでもいい事に違いないだろう。
  君はこの世界の全てに心を閉ざしてしまったのだから。
  ある日、君は眠りについたまま目を覚まさなくなるだろう。
  そして君は次の夢の中で目を覚ます。
  悪い夢を見たものだと、
  君は大きく伸び上がっておもうかもしれない。

  新しい朝は希望に満ちているかい?
  ジョージ、君の見る次の夢が、どうか孤独なものではありませんように。







※ 2012年6月24日
  ロンサム・ジョージは生息していたガラパゴス諸島でこの世を去りました。
  推定年齢は約100歳でした。