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太陽のはなびら

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【暖かな村(4)】



 ピリカに手を引かれて、シンは村の中心にある広場にやってきた。
広場は、外からやってきた、多くの商人たちが出店を開いている市場の様な場所だ。
普段でも活気のある場所だが、今日はいつにもました盛況ぶりだ。
「なんだか盛り上がっていますね。何かあるんですか?」
ピリカは少し不思議そうな顔をして、ああ、と声をあげた。
「そっか、シンはまだここにきて一年たってないものね。今日はね、年に一度の村の祭りなの。だからこうやってたくさんのお店が出回るのよ」
周りを見ると、シンが稽古をつけている子供たちがはしゃぎまわっていた。
そのうちの一人が、シンとピリカの方にかけよってきた。
「ピリカねーちゃん積極的ー! 2人ともラブラブだなー!」
「ばっ、ばかヨハン! そんなんじゃないわよっ」
ピリカは顔をまるで沸騰したやかんの様に赤くして、ヨハンと呼ばれた少年を怒鳴りつけた。ヨハンはにやにや笑いながら、素早く人混みの中に消えていった。
「ご、ごめんね弟が変なこと言って。気を悪くしたらごめんね」
今にも湯気がでそうな顔をかくしながら、ピリカは必死に弁解する。そんなピリカを見て、シンは柔らかなほほえみを浮かべて、彼女の手を差し出した。
「お祭りの日は、大切な人と楽しむものと両親から教えてもらいました。よかったら、僕と今日一日、一緒に過ごしてくれませんか?」
ピリカは一瞬目を見開き、その後、赤い顔を見せないよううつむいた。そして無言でうなずき、シンの手を取った。

作品名:太陽のはなびら 作家名:伊織千景