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CROSS 第5話 『忘れてはならぬ戦い』

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「……ありがと」

 爆風は止み、2人はゆっくりと起き上がった。起き上がりながら、佐世保がボソっと山口に礼を言った。
「おまえ、離れるときはちゃんとオレに伝えろ!!!」
山口が怒鳴った。彼は、衝撃を少し受けたせいか、軽い脳震盪を起こしている様子だった。
「……はい、すみませんでした」
佐世保は小声で謝った。
 山口はため息をつくと、穴に隠れている兵士たちのほうを向き、
「今だ!!! 町に入れ!!!」
大声で命令した。
 兵士たちは次々に「道」を通り、町へと入っていった。すぐに町から銃声が聞こえてきた。ウィルとガリアが2人の元へと走ってきた。
「大丈夫ですか?」
「衛生兵を呼びましょうか?」
ウィルとガリアは口々に言った。
「……大丈夫だ。今行くよ。 佐世保も行けるな?」
「はい!」
佐世保は作戦開始前の感じに戻っていた。ガリアもいくらか元気を取り戻したようだ。

 山口たち4人は、追随する兵士たちとともに町へと入る。町に入った時、今まで聞こえていた銃声がほとんど無くなり、辺りはかなり静かになった。
 町中を進んでいると、前方で兵士たちが、トラックの残骸の物陰に隠れたまま、その場で留まっていた。不審に思った山口が兵士たちに、なぜ前進しないのか尋ねる。
「……前方の学校に敵が立て篭もっているんですが、子供たちを人質にしていて、攻撃も突入もできないんです……」
兵士が、前方にある学校とみられる建物を指さしながら悔しそうに言う。山口は少し考えてから、
「こちら側の民間人はいるのか?」
「日本人学校ではないので、多分いませんよ。この戦争が始まる前に、民間人は全員避難しているはずですから……。物好きな『人間の盾』の連中はいるかもしれませんが……」
「近くに従軍記者とかはいないな? もしくは、物好きな戦場カメラマンとか」
「……いませんが、どうしてですか?」
兵士はおそるおそる聞く。

「このままにしておくわけにはいかないの」
「かまわないから、焼け!」
山口と佐世保の言葉に、その場にいた兵士たちは凍りつく……。
「バレたらヤバいですよ……」
兵士の1人が弱々しく言う。
「なーに、『民間人がいるとは知らなかった』とか言えばいい。どこの部隊でもやっていることだから、それ以上追及されることは無い! 『戦争ではよくあること』で終わるさ!」
山口は自信を持ってそう言い切った……。
「あいつらは仲間やこっち側の民間人をたくさん殺しているのよ! どう思う?」
佐世保は兵士たちを扇動する。
 2人の言葉に、兵士たちは動揺を隠せなかった。良心と憎悪との間で揺れているのがわかる。
「やっちまおうぜ!!!」
山口と佐世保の後ろで、ガリアが大声で叫ぶ。ガリアの目は殺気で満ちていた。ウィルは横で、彼を同情のまなざしで見ていた。
「あいつらは、俺たちの仲間を殺した!!! 目に物を見せてやろう!!!」
「我が国の反逆者は、兵士だろうが民間人だろうが、みんなゴミだ!!!」
「リメンバー・コスタ!!!」
ガリアの勇ましい言葉によりスイッチが入ったのか、兵士たちも次々に大声を張り上げ、下げていた武器をその建物のほうへと向けた……。
 その場にいたウィルを除く全員が「殺る気」に満ちていた……。提案した山口は、そのおぞましい殺気に、心の中でたじろいでいた……。