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CROSS 第5話 『忘れてはならぬ戦い』

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第6章 芋砂、かっこ悪い。



 そして、山口たちはなんとか目的地である広場に着いたが、山口たちの部隊は遅れたらしく、広場は既にたくさんの兵士たちでいっぱいだった。
 捕虜がたくさん出たらしく、広場の一角に有刺鉄線の囲いを張り巡らせ、その内側に捕虜を座らせていた。

「ずいぶん遅かったじゃないか?」
山口に、他の中隊の指揮官である士官がイヤミったらしく話しかけてきた。この士官は、山口大尉と同期だった。
「地形が悪過ぎただけだ」
山口はそっけなくそう言い、その士官から離れようとした。
「ああそうかい。……まぁ、士官学校をワーストスリーで卒業したような奴が指揮官じゃあ、たくさん死人が出るのは当たり前だよな」
士官のそんな言葉を、山口は無言で無視したが……、

「今なんて言った!!!」

 佐世保が広場中に響き渡るほどの怒声を張り上げた。その怒声に、山口たちや士官はもちろん、広場にいた全員が驚いた。
 士官は、佐世保の怒声に少したじろいたが、すぐに落ちついた様子で、
「そこの女!!! 上官に対してそんな言葉使いをするな!!!」
士官も佐世保に負けないほどの怒声を張り上げた。

   ズキュン!!!

 突然、1発の銃声が広場に響き渡る。……その銃声の後、士官は倒れた。

 山口は一瞬、佐世保が殺ってしまったのかと思ったようだが、違った。
「敵だ!!! あそこの塔にいるぞ!!!」
1人の兵士が、広場から離れた位置にある塔のほうを指さして言う。確かに、塔の上に伏せて銃を構える人影があった。
 再び、銃声がした。山口の近くにいた兵士が頭を撃ち抜かれて倒れた。広場はパニックとなり、塔に向かって銃を乱射した。何人かの兵士は狙撃銃で応戦したが、広場の騒然とした状況から集中することができないようで、逆に敵兵に撃たれていった。山口と佐世保は、広場に放置してあった荷車の下に隠れた。他のガリアやウィルたちは、コンテナの影に隠れていた。
 銃声は断続的に続き、銃声の度に兵士が倒れていった。山口は荷車の下で体の向きを整えると、佐世保に小声で、
「反撃するぞ。あの士官を殺してくれた奴だけどな」
「……どうやって?」
佐世保は思わずニヤリとしてから、山口に尋ねる。
 山口は、5メートル先に落ちている大型狙撃銃に指さす。その狙撃銃は、すぐ近くで倒れている兵士の武器だったのであろう。彼はすでに戦死しているため、借りる許可は不要だ。
「あれで撃つ」
「……でも、山口さん。危険ですから、私が撃ちます」
佐世保は気遣う口調で言った。
「あれと同じ銃を、以前使ったことがある。反動がキツいから、おまえには無理だ」
山口は、佐世保の身体を一通り見てから言った。山口の言葉や視線に、佐世保は頬を膨らませる。
「ひど〜い!」
「悪い悪い! ……とにかく、オレはあの銃でやる。おまえは乱射して、敵の気を引いてくれるか?」
「……嫌な役目ですがやります」
佐世保はまだムスッとしていたが、了承してくれたようだ。