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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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うこん桜の香り

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絵を描くように



百合は波子の月命日の墓参りを済ませ、少し暖かな日であり、川原の土手を散歩した。
犬を連れて散歩していたり、ジョギングをしていたり、若い2人ずれや、老夫婦にも会った。
それぞれの人がそれぞれの思いで歩いている。
百合は西山の事を考えていた。
とてもいい人だと解っていた。プロポーズもされた。
百合には西山がいい人過ぎて、結婚するには躊躇いを感じた。
百合は西山に対してありのままの自分を見せていたつもりであった。しかし、西山と会えば会うたびに、西山の優しさに轢かれて行く自分が解っていた。
百合は食事をしお酒を飲んでも、手を握ることしかしない西山を歯がゆく感じていた。かといって、女の百合から西山を誘う事は出来なかった。お互いが1人身であるし、どんな会話をすることよりも、お互いの肌と肌を重ねることの方が、何よりも2人を近づけることになるのは、お互いが知っていた。

だがどちらも、そんな誘いはしなかった。
百合はだから決心が鈍ったのだ。
西山と肉体が結ばれていたなら、西山からプロポーズをされた時に、すぐに受けていたと思うのだ。
いつの間にか、名所の桜並木に来ていた。
焼そばやおでん、金魚すくいなどの店が並んでいる。
ソメイヨシノが美しさを誇示しているようだ。確かに満開の桜は美しい。
西山はいつまでもこの満開の桜を見ているのではないかと、百合は思った。
私の体を知ってしまえばあとは散る桜のように、色あせて行くことが西山には耐え難いことなのかもしれない。
女の美しさははそんなものではない。
花の後には青葉の美しさもある。派手ではないが、緑の美しさである。
この緑の葉が来る年の花の美しさを生みだすのだ。

作品名:うこん桜の香り 作家名:吉葉ひろし