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漢字一文字の旅  二巻  第一章より

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三の三  【名】



【名】は「夕」と「口」の組み合わせ。
「夕」は肉の省略形、「口」は祝詞を入れる器の形。

かって子供が生まれると「肉」を供え、祝詞をあげる【名】という儀礼があった。
その時に子供に名前を付けたため、【名】は「名づける」という意味になったとか。

【名】は体を表す。
そのためか親が名づける名前は子供への期待が当然籠もっている。
そしてそれは時代ともに変遷していくものだ。

今から100年前の大正元年、第1位の名前は
男子は「正一」、女子は「千代」だった。
これが大正2年になると、男子は「正二」、女子は「正子」となる。
そして大正3年は「正三」、女子は「静子」。

明治が終わり大正に、当時の親たちは新しい世代・大正の「正」に拘った。
そして3年経っても「正」を見切れなかった。親たちはそういう思いだったのかと、面白い。

それでは昭和の戦前戦後の第1位の名前はどうだっただろうか?
きっと戦争に勝ちたかったのだろう、男子は昭和17年から20年まで「勝」。
だが敗戦後、豊かさを願い、昭和21年には「稔」となる。

一方女子は、親たちは戦渦にあっても、きっと娘の平穏を願っていたのだろう、なんと昭和18年から23年まで「和子」だ。

ならば戦後豊かになり、バブルの頃は……男子は「翔太」、女子は「愛」。
夢物語はどこまでも続くかのように、現実の暮らしから少しかけ離れた感覚を覚えざるを得ない。

そして最近はと言うと、「大翔」(ひろと)と「陽菜」だ。
閉塞した現代、子供だけには展望の開けた未来があるようにと願いが籠もる。

そして話しは飛ぶが、
「寿限無寿限無、五劫のすりきれ、海砂利水魚水行末、雲行末、風来末、食う寝るところに住むところ、やぶら柑子、パイポパイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグリーンダイ、グリーンダイのポンポコナのポンポコピーの長久命の長助」

これはお馴染みの落語の人物名。
しかし、こんな長い名前は他にないだろうと思うが、世界にはあるのだ。

「パブロ、ディエーゴ、ホセー、フランシスコ・デ・パウラ、ホアン・ネポムセーノ、マリーア・デ・ロス・レメディオス、クリスピーン、クリスピアーノ、デ・ラ・サンティシマ・トリニダード」

仰天することなかれ、これはピカソの名前。
長すぎたため本人は「パブロ・ルイス・ピカソ」と名乗っていた。
それでも邪魔くさくなったのだろうか、最後は「パブロ・ピカソ」と自己紹介していたそうな。

省略し過ぎの感はあるが、こちらの方がわかりやすい。

いずれにしても【名】は、単に「夕」と「口」の組み合わせたもの。
だからだろうか、名前はシンプルが一番だ。