小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

漢字一文字の旅  二巻  第一章より

INDEX|18ページ/133ページ|

次のページ前のページ
 

三の二  【臭】



【臭】、この漢字の上の「自」は正面から見た「鼻」の形だとか。
そして、下の「大」は元々「犬」(いぬ)だったそうな。
そこから「犬」の「鼻」で嗅ぎ、におう/くさいとなったらしい。
うーん、そうだったのか、と唸るしかない。

さてさて身の回りに臭いものは多くある。
その中でも恐怖の五大異臭がある。
それらは……ドリアン、ブルーチーズ、くさや、にんにく、鮒寿司だ。
この中でもくさやは関東の風味(?)、鮒寿司は近江の郷土珍味となる。

「鮒ずしや彦根の城に雲かかる」
彦根を訪ねた与謝蕪村がそう詠った。
だが、きっと雲まで臭かったことだろう。

鮒ずしは……いわゆる寿司の原点のなれ寿司。
二、三年塩と米飯で漬け、発酵させる。アミノ酸のうま味が一杯の伝統食品だ。

この材料となる鮒が琵琶湖のニゴロブナ。
実はコイ目コイ科コイ亜科に分類され、どちらかというと鯉なのだ。

したがって体型はゲンゴローブナのように膨らみを持たず、スリムな形。
湖の深い所に棲むイケメン魚。
そんなニゴロブナ、現在は捕獲量が激減し、高級魚だ。

魚は希少、米は近江の高級米、そして途方もなく手間がかかる。
したがって美味ではあるが、珍味。めったに口にすることはない。
しかしだ、たまたま巡り会った時に気を付けなければならない。
犬がそっぽ向くほど臭いのだ。

「鮒ずしや彦根の城に雲かかる」
与謝蕪村もこう詠いながら、きっと【臭】という漢字を思い浮かべたことだろう。