小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

SAⅤIOR・AGENT

INDEX|109ページ/145ページ|

次のページ前のページ
 

Episode13,現れた強敵



 見られた以上話さない訳にもいかなかった。
 とりあえず場所を移し、舞とデートの約束をした駅前広場にやって来た。
 そしてセイヴァー・エージェントや宇宙平和条約、そして2年前にオレが巻き込まれたコロニー爆破事件まで全て話した。
「そうだったんですか、貴方達は地球の平和の為に……」
「まぁな、そんな訳だからオレ達は戦ってるって訳だ、それにしても厄介な事になったぜ」
「人事みたいに言うな、元はと言えばお前の注意力が足りなかったせいだろうが」
「うるせぇな、記憶は消せばいいだろ」
「えっ?」
 塩田ちゃんは大きな瞳をさらに大きくさせる。
 自分の始末くらい自分で蹴りを付ける、オレはギルを首から外すと塩田ちゃんに近付けた。
「悪いけど決まりなんだ、セイヴァー・エージェントの協力者以外に記憶を消すってのはな」
「ま、待ってください!」
 塩田ちゃんは立ち上がってオレを止めた。
 そして頭を下げてこう言った。
「私を……、セイヴァー・エージェントにしてください」
「「「「はぁ?」」」」
 オレ達は驚いた。
 さすがに予測不能の事だったんだろう、サイモンも顔が曇った。
「はぁ? 何言ってんの?」
「お願いします、これこそ私が求めていた事なんです?」
「何だそりゃ?」
 オレ達は彼女の事情を聞いた。
 塩田ちゃんは幼い頃から『正義』に憧れ、その事を周囲から理解されずに孤立していたらしい。
「正義は誰にも理解されない事だってのは分かってます、実際さっきだって良い友達になれそうだった人に裏切られました」
「それは災難だったな」
「でも私は自信があります、正義の為ならどんな事だって出来ます!」
「無理だな」
 バイスが言うと刹那の沈黙が走る。
「どうしてですか?」
「理由は色々あるが、1番は危険すぎるからだ、地球人の身体能力は現在確認されてる星人の中でも下から数えた方が早いくらいだ、仮に核ミサイルを用意したとしても大して差は縮まらん」
「だな、星人の中には放射能を食っちまう奴もいるしな、残念だが諦めて……」
「嫌です!」
 塩田ちゃんは叫んだ。
「戦ってるんですから危険なのは承知の上です! でも訓練や鍛錬次第でどうにでもなるはずです!」
 そんなのは素人の考えだ。
 それで勝てれば地球人最強だ、超能力でも使えれば多少は抵抗する事は出来るが、そんなの付け焼刃も同然だ。
 だけど塩田ちゃんはなおも必死でオレ達に頭を深く下げ続けた。
「お願いします、私もセイヴァー・エージェントに……」
「無理よ」
 聞きなれた女の声にオレ達は振り向く。
 そこにいたのは千鶴ちゃんだった。
「里中先生?」
 そう言えば千鶴ちゃんがセイヴァー・エージェントだって事は教えて無かったな。
 千鶴ちゃんは近づいてくると塩田ちゃんに訪ねて来た。
「塩田さん、1つ聞きたいけど…… どうして正義にこだわるの?」
「えっ? どうしてって?」
「正義なんて物は人それぞれよ、正義と言う言葉だけの戒めで戦争が起こるのは結構あるわ」
「せ、正義は争いを起こしません! それに戦争が起こるのは正義に反した悪のする事で……」
「そうとも限らないぜ」
 オレは割って入る。
 平和に生きたいとは宇宙の誰しもが願う事だ。
 だが中にはその平和に不満を抱き、全てをぶっ壊して自分達の都合のいいように世界を作り変えたいと思う者、さらには今戦っているオメガみたいに惑星間の間のいがみ合いを利用して戦争を起こさせる奴らもいる。
 しかし中には『正義の為』とか『多少の犠牲は止む終えない』とか理由を付けて人の命を無責任な言い訳で終わらせ、その遺族達の怒りが頂点に達して戦争が起こる事もあるって事を話した。
「タクミ君の言う通りね、争いは誰かがどこかで我慢しなければならない事だけど、人を不幸にしてまで作り上げる正義なんて私達は…… いえ、私は認めないわ」
「チヅルちゃん?」
 オレは千鶴ちゃんの顔がとても切なそうに見えた。
 すると今度はいつにもなして真面目で真剣な顔になった。
「……塩田さん、貴女は確かに正しい、でも決定的に欠けている物があるわ」
「欠けて…… いる物?」
「それが分からないうちはセイヴァー・エージェントにするどころか正義を語る権利は貴女には無いわ」
 そう言いながら千鶴ちゃんはポケットに手を入れた。
 そして取り出したのセイヴァー・ブレス、舞と同じ奴だった。
「それ…… 白金さんと同じ?」
「あの子はセイヴァー・エージェントの協力者だからね。もし貴女がセイヴァー・エージェントになりたいなのなら、明日中にその答えを探しなさい、もしそれでダメなら諦める事、良いわね?」
「ちょ、千鶴ちゃん、良いのかよ?」
「そうです班長、いくらブレスを付けていても完全に身の安全を保証できる訳ではありません」
「構わないわ、もし何かあれば私が責任を取る、それで良いでしょう?」
 その言葉にバイスも何も言えなくなった。
 いつにも無くマジだったからだ。
 この場にいる者達は息を飲む、すると千鶴ちゃんは塩田ちゃんに言った。
「塩田さん、今ならまだ断れるわよ、でも断った場合は記憶を消させてもらうけど…… どうするの?」
 千鶴ちゃんの交渉に塩田ちゃんは一瞬迷うが決意を決めるとブレスに手を伸ばした。
「分かりました。やります、私が正しい事を証明して見せます!」
 そう言って塩田ちゃんはセイヴァー・ブレスを左腕に巻いた。
「その代わり異星人関係の事は他言無用よ、もし話せばブレスが貴女の記憶を消すわ、良いわね?」
「はい」
 塩田ちゃんは頷いた。