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私は殺される!同人作家・沙織

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それでも沙織は屈しない



 半年後、沙織はボイスレコーダーで、やおい系の小説のストーリーを話し、それを録音した。親友の黒猫が沙織が話したストーリーをキーボードで入力してオンライン小説に投稿する。

「美少年の斉藤はブリーフ一つだけの姿で、相手の男性と抱き合った・・・」
沙織は小説のストーリーを話し続けた。
「17歳の美少年、斉藤と30歳の男性、田中は男同士で接吻した」
黒猫はボイスレコーダーを止め質問した。
「沙織、幸い頭を打たなくて良かったわ。脳に異常がなくて。あの事故で数十人の乗客が死亡したから。で、最近の沙織の小説は、いまいち内容が薄いわ」
「そうね。こんとこ男同士の濡れ場ばかりで・・・」
「今日は、この辺でやめましょう」
「で、オンライン小説の感想とポイントは」
「それが評価がいまいち。感想も少ないの」
「そうなの。今の私には手が骨折しているからキーボードが使えない」
「あともう少しがんばれば、元のようになるわ」
沙織は、両腕、両脚を複雑骨折した。ギブスがはめられている。指が思うように動かない。

 黒猫は病室のテレビを観た。
「今朝、多摩市に住む女性漫画家、中田美枝さんが散歩中に刃物で刺されました。テロリスト団体・女性原理党から犯行声明がありました。『淫らで不道徳な女性たちに次ぐ。私たちは社会を浄化するために、異常性欲を描いた漫画家や小説家を殺害し続ける。ネットでの活動も認めない。全ての不浄なものを地球上から駆逐するまで私たちは活動を停止しない』なお、午前10時、練馬区のアニメスタジオに乱入事件もありました。アニメーターの腕が切り落とされました」
黒猫はテレビの画面を消した。
「ほんとうに嫌な時代になったわ。言論で認められないから暴力で訴えるなんて、この時代は狂っているわ」
「知識が多すぎるため狂った女性が増えている。SF小説『華氏451』では、知識が人間を狂わせ戦争を起こし核戦争へと発展したわ」
「そうなると昔の人が書いたSF小説も侮れないわ」

 黒猫は自宅に帰り、匿名で沙織が考えた、やおい系小説をオンライン小説サイトに書き込んだ。