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私は殺される!同人作家・沙織

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最先端技術で作られた電車の盲点を突かれた



 5両編成の通勤快速電車は暴走を続ける。最先端技術で作られたため多くの盲点がある。精密な電子回路の塊であるから、わずかな故障で制御不能となる。通勤快速電車はモーターそのものがブレーキになるから、それを制御する装置が破壊されたら、電車は止まらない。
「どこか、緊急停止装置がないか」
男性乗客の声がする。
「どこにもない」
製造コスト削減のため緊急停止ボタンもドア開閉装置もない。運転室にある緊急ブレーキもない。緊急時には全く融通が利かない。
「どうしよう。このままだと私たちは死ぬ」
1両20メートルの車両の前方にいる乗客はスマートフォンで警察に知らせた。電車の制御装置は破壊できても、電磁パルス発生装置の影響は半径5メートル。テロリストから遠い場所にいる人たちのスマートフォンは破壊されない。
「みんな、さようなら。特に黒猫ちゃんとは、もっと長くつき合いたかった」
沙織は死を意識して、つぶやいた。
「1分が1時間くらい長く感じるわ」

 マイクロ波・電磁パルス発生装置の周辺の人たちは火傷で苦しんでいる。電子レンジと同じ作用なので体内の内部を焼くことができる。
沙織は思った。
「近年増加している爆破テロは火薬や化学物質を使ったものが使わる。警察や市民との連携で防げたがマイクロ波・電磁パルスという方法は思いつかなかったわ」
沙織は電車の制御装置がある場所、マイクロ波で火傷して倒れている女性テロリストがいる場所に移動した。電車は大きく揺れている。
「ねえ、あんたのために私はもうじき死ぬのよ!私の人生を奪うなんて」
沙織は女性テロリストを思いきり蹴っ飛ばした。
女性テロリストは火傷で苦しんでいる。八つ当たりしても電車は止まらない。

 沙織の脳裏には思い出が走馬燈のように浮かび続けた。死への恐怖が収まった。
「私、小学生の頃が一番楽しかったわ。修学旅行は楽しかった。クラスメイトの女子とふざけたり遊んだり。それから中学3年の時の受験勉強はつらかった。進路のことでお母さんと喧嘩したわ。ごめんねお母さん・・・」
そのとき通勤快速電車は駅に停車中の普通列車に猛スピードで衝突した。

 前方から3両目にいる沙織の身体が空中に浮かんだ。投げ出されるとき瞬間的に目の前に立体的な映像として幼稚園に入る前のときから22歳の現在の時までの記憶が猛スピードで見えた。
「私、このまま死んだら恥ずかしい・・・。人に見せられないものばかりで・・・。私が死んだら天国に行けるの?死んだとき私のプライベートはどうなるの。でも、もう職場でのストレスを受ける必要がない・・・。お金のことに心配もなくなる。私は死ぬのね」
 沙織は不安と安堵感が入り交じった。沙織の身体は空間に浮かび続けている。それは沙織の体感時間であり、第三者から見れば1秒に満たない瞬間的な現象である。

 5両編成の通勤快速電車が衝突したとき、ものすごい衝突音がした。ステンレス製の車両は潰れた。一瞬で多くの乗客が死亡した。

 沙織は重症を負い救急病院に入院した。