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夜になってから蝶は舞う-DIS:CORD+R面-

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これで飛行能力まで備わっていたらもはや無敵の域に達してしまう。いや、すでにその域は充分に近いけども。

脚力と羽ばたきで岸から50メートル程にあった船上に降り立つ。いや、そのまま落下したと表現した方が適切だ。
銃弾をいくつか喰らっていた。
羽や身体が万全であれば空中でもよけ切っていたのだろう。
しかし今このリヴァーダはあまりにも傷を負いすぎていた。

船上で倒れ込みながらもすぐさま体勢を立て直し膝立ちに。
そしてその膝を軸に回転し近場の兵士5人を湖の中へ叩き込む。
瞬間の出来事で船上の部隊は唖然とするがすぐさま銃を構える。遅い。鈍い音。
2人が膝から落ちて倒れる。
すでに後ろに回り込んでいたロッチャ。

ロッチャの息は荒い。噴出する血の量は増える一方だ。
赤黒い液体。それがリヴァーダの血。

石棺の上に立つ。血がドバドバとその四角い石の箱を彩っていく。
彩る?黒く塗りつぶしていってるのか。

「なんのマネです?コレをどうしようと?」

声の、言葉の端々に鋭い刃が光るような、重く固い鉄槌が振り下ろされるような、そんな感覚を覚える。
それぐらいロッチャの発する言葉は人類種の身体と精神を貫いていた。
声の質か。それともそこに漂う空気か。
半歩下がる前衛の兵士。手負いの傷ついた一人のリヴァーダにすら恐れおののく。

ガグン。石の擦れる音。
ロッチャは石棺の上部、蓋部分を力一杯蹴り上げてその箱を開く。
ズズ、ゴゴン。と甲板に落ちる重たい蓋。
その音だけで震えてる奴もいる。もはやこの手負いの化け物の独壇場だ。
銃を放つ者もいない。構えてる奴もいない。

今、その棺が、いや、牢獄が開かれたからだ。未知の領域。ある意味で50年前の封印を解く行為。

「あっ?どうして?」
ロッチャは石棺を覗き込み目を見開いた。
そしてそのまま周囲の人類種を睨み回す。

「どこにやりました?」

ロッチャの問いかけに答えようとする者は皆無。いや、その問いかけがなんなのかわかる者もいない。

「なぜいないんです?この中に。どこに行ったんですか?」
ワナワナと小刻みに震えているのがわかる。
リヴァーダでも恐怖を抱くのか?それとも怒りなのか。
それを推し量る術は今の所、周囲の人類種にはないが大変な事態になったことはすぐに理解。

その光景を見て人類種は悟る。
石棺の中には何もいなかったことを。
捕われたリヴァーダの背徳者が消えていることを。

「おい・・・この糞尿野郎の人類種の方々・・・これはどうゆうことですか!?」
「し、知らない。我々はまだその箱を開けてもいない!」
「開けてない?偽るのもいい加減にした方がいいですよ。チッ。
お前ら糞尿野郎共は偽るのが得意技なんですから。騙すのが貴様ら唯一のスキルじゃねええか!!。
ホントのこと言え。このゴミクズ共!言わねえと船ごと沈めて未来永劫浮かんで来ねえようにしてやるよ!ビチグゾがよーーー!!」

口調が、だんだん、激しく、というか単なる罵倒へと変化している。
その変化が恐ろしさに拍車をかけている。

「ほ、本当だ!本当に知らない!」
こわばる人類種の面々。これでも一人前の兵士。軍人だ。

「・・・クソっ・・・とにかく貴様らヒトが俺達にとって重きモノに手を出した事実は変わんねえんだ!
不可侵の領域を犯したんだらよー!完全な、侵犯だ。貴様らの頭に伝えとけ。次は一国程度じゃ済まさねえ。
人類すべてをグッチャグチャの肉片にしてパーティーしてやるってな!
この世界から消し去ってやるよ。」
ロッチャの怒りと焦りと憎しみは血と同様に赤黒くなって渦巻く。天に昇る。

また月が隠れ出す。