小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

夜になってから蝶は舞う-DIS:CORD+R面-

INDEX|7ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

揺れるレヴィエスと真紅のカーテン


レヴィエス宮揺れる。
「すぐに!直ちに!今!!宣戦布告するべきだっ!」
唾を飛ばす古き蝶。その唾が大理石のテーブルにベットリと垂れるがとりあえず誰も何も言わない。
チラリと見るがそっとしておく。

「人類種すべてに?それはさすがに無謀ですな。今や人類種の総人口は30億ですぞ!」
「馬鹿モン!30億すべてが戦うわけではないわー」

唾の飛ばし合いになった。興奮し頭に血が上った者がテーブルを蹴飛ばしそれが他の者にぶつかり険悪なムードを連れて来る。

レヴィエス宮の揺れは続く。

グランシュテュルード地域。
リヴァーダ族が生息する領域であり国として認識されている十字湖沿岸の地域。
その首都、グランツェンデ。ソコに中心となるレヴィエス宮殿がある。
議会など持たず完全な君主制であるリヴァーダでも一応政治を執り行う組織はある。
それが八葉と呼ばれる所謂、最高幹部会。

今、人類種による『石棺』の無断開放に対する処遇を議論している。
だいたい声のでかい奴が勝つ議論だ。
もしくは唾を多く飛ばした者が。


「陛下!陛下のお考えは!?」

真紅のカーテンの向こう、奥の間に座るシーナス・クローネン女王陛下に注目が集まる。
しかしいくら待っても声はない。

「陛下・・・?」

レヴィエスはまだ揺れる。

咳払い。静けさに耐えれなくなった八葉の一角。

「あぁーところで、シドルフは来とらんのか?」
「あ奴は八葉の一員である自覚がなさ過ぎる。やはり八葉から除名した方が・・・」


「勝手なこと言ってんじゃねえよ。老害共」

割って入る声。
それは奥の間より響く。皆一様に驚愕の表情を顔に貼り付け、驚き過ぎた古き蝶は椅子から転げ落ちた。

「まったく、黙って聴いてりゃ好き勝手・・・しかもなんもわかってねえ。
アンタらこそその席をもっと有能な奴に譲った方がいいんじゃねえか?」

そう毒づきながら奥の間より真紅のカーテンを捲り揚げ現れるオトコ。
なぜか腰に手をあてポーズを決めている。ニヤリと笑い得意気だ。

「き、貴様!シドルフ!なにを!いや、奥の間から・・・な、なにをしておる!」

現れたのはシドルフ・ライドン。
まだ齢70歳の、新しき八葉。
100歳を超えない八葉は今のところ長いリヴァーダの歴史の中でもこのオトコだけだ。
歴史的異例の大抜擢。そう注目されている。
その注目度はリヴァーダ族中を駆け巡った。と言っても1000人にも満たないわけだけど。


タバコに火をつけ椅子を引き寄せ座る。
大股開きふてぶてしい目付きを光らせた。
言うまでもなく素行不良。
他の八葉は煙たがる。吐き出す煙でむせ返る。

「シドルフ。ここは禁煙だ。ルールを守れぬ者は罪に落ちる」

恰幅のいい、顎ひげを蓄えたオトコが冷静に咎める。

「はっ!ケイナスのオッサン!ルール?ルールときたか?
ルールを守って何かいいことはあったか?ユリカゴの輸出入禁止法。
アレでこの50年の新生児はたったの一人だ。アンタら衰退したいのか?お先に頭吹き飛ばしてやろうか?」
そう言って笑うシドルフ。


「シドルフ・ライドン。戯言が過ぎますよ」

また奥の間。今度は正真正銘、女王陛下の声。

「だいたい奥の間に入るなど言語道断じゃ!それこそ重罪だぞ」
古き蝶がまた唾を飛ばす。

「ふーん。なら俺のことも十字湖に沈めるか?やだなー、それは」
歯をむき出して笑う。何本か緑色に変色している。
白く磨かれた象牙のような歯が一般的であることからもこの緑色は異例すぎる。
むしろ何をしたらこの色になるのか不思議なぐらいだがシドルフ本人は気に入っている。

「さて、じゃあ節穴共。本題に入ろうか。宣戦布告?
そんなもん今する必要はねえ。それよりも問題なのが二つだ。」

「二つ?」
口を開いてなかったオンナの八葉がここで発する。

「そう、アビリア姉さん、やっぱ食いつきがいいね」
シドルフの言葉にアビリアの切れ長の目は冷たく光る。

アビリア・ボートニー。112歳の八葉では若手に属するオンナ。
冷静・冷酷・冷徹ととにかく冷たいと評判だ。

「いいか?まず誰でも問題だとわかること。フューリーはどこに行ったのか」

皆が小さく頷く。古き蝶は眉間に皺をよせソッポを向いた。

フューリー。
フューリー・ロトーツェン。
つまり、『背徳者』だ。
石棺の中に閉じ込められているはずの同族殺しの大罪者。
ケイナスはその名を聞くだけで虫唾が走ると言わんばかりにあからさまに嫌な顔をする。

「まあ、こんなもん考えたってわかんねえ。いつ抜け出したかもわかんねえしな。
そもそも枷を付けられ制御されてるはずなのに抜け出すチカラがあるとは驚きだ。うん、驚いた。
なあオッサン。驚いただろ?正直言ってみ!?ああーいい、いい。言わなくていい。
アビリアのが聞きたい。どうよ?あっ?マジ冷たい目だな・・・
まあいいや。で、つまりぃフューリーのチカラは相当だな。
やっぱ死罪にするべきだった。なあ、ハハハ」
乾いた笑い。矢継ぎ早に言葉を連ねたシドルフを汚物を見るような目で見始める八葉。


「おい!」
「うるせえ。背徳者には死罪を適用するべきだってのは俺の以前からの主張だ。いちいちツッコむんじゃねえよ」

「それで?もう一つは?」
アビリアの冷えた問い。ほんとに背中がゾクゾクしてくるから恐ろしい。

「ふははっ。ロッチャとリミヤが合わせて相当の深手だ。報告は聞いたか?有り得ねえ。
一度に、そう、同時に深手を負った。今まであったか?」
おし黙る面々。
構わず続けるシドルフ。

「報告じゃ沿岸に大穴が開く程の爆発があったと。確認させに行ったら確かに大穴だ。
直径5,60メートルはあった。深さもかなりのもんだ。いいかい?
・・・・・・・・
一撃でそこまでの打撃を加える兵器は・・・・・今まで、なかった。」

静まるこの広間。カーテンが少し風で揺れる。

「人類種が得意とする砲撃にしたってせいぜいその十分の一程度の破壊力だ。
なぜ今回飛躍的に破壊力が増してるんだ?」

誰も答えない。答えなどない。

「何らかのディスコードを兵器化することに成功したのか?
いや、それなら人類種はディスコードを完全に制御できる術を手に入れたことになる。
そうなったらかなり凄いぜ!?土下座して靴舐めてでも教えててもらいてえ術だよね。
なあ、オッサン。あっアビリア、どうよ?靴舐める?あっお前舐めさせる方か。モロSッぽいもんな。
とにかく・・・脅威だろ?」
「無理だな。ディスコードを兵器化するなど」
「ああ、そうだな。俺も同感だ。あくまで仮説だ。ケイナスのオッサン。
じゃあ・・・人類種はその殺しの技術力を上げて新たな兵器を完成させたか・・・・・
ははっ。ほんと人類種の『殺し』の向上心ときたら頭が下がるよなー。
まあどちらにしろ脅威だ。わかるか?俺らリヴァーダが一度に、一撃で二人も!
深手を負う程、いや、あわや死に至る程の攻撃を加えられた。
これはな・・・人類種が我々リヴァーダにとってただのユリカゴ候補の弱き種じゃなく
対等の位置まで登って来る存在になってることを意味すんだよ」

「はははっ!シドルフよ!若いな。人類種が我々と対等?ありえんよ」
大口を開ける古き蝶。