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愛憎渦巻く世界にて

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「マリアンヌ様!!!」

 シャルルがそう叫びながら飛び起きると、すぐそばにいたマリアンヌは驚いていた……。飛び起きた彼は、熱い砂浜に座っており、彼女もすぐそばに座っていた。
「よかった! 元気そうで!」
彼女はほっとしていた。そこで彼は、自分は夢を見ていたことに気づき、一安心できたが、すぐに彼女が溺れていたことを思い出し、
「マリアンヌ様こそ、大丈夫ですか?」
彼女を気遣った。
「大丈夫です。ゲルマニア様とウィリアム様が、私とあなたを助けてくださいました」
彼女は、周囲を指さした。その方向には、ウィリアムとメアリーやゲルマニアがおり、ヤシの木を見ていたり、海で何かを探していた。シャルルは、彼らを見ると同時に、自分が今どこにいるのが気になった。

 シャルルがいたのは、どこかの砂浜だった。青空に浮かぶ太陽に熱せられている砂浜の奥には、彼が見たことが無いような熱帯植物が生い茂っており、不気味なジャングルを形成していた。さらに、そのジャングルの中から、得体の知れない動物の鳴き声が聞こえてきていた。そして、砂浜を挟んだジャングルの反対側には、青い海が地平線の向こうまで広がっていた。

「ここはどこなんですか?」
周囲を見渡した後、シャルルが不安そうにマリアンヌに尋ねると、
「この島は『トラアン島』という島だ」
ちょうどやって来たゲルマニアが、彼の質問に答えた。彼女は、両手に大きな箱を持っていた。南京錠がかかっていたようだが、こじ開けてあった。
「まったく。まともに泳げないのに、マリアンヌを助けようとするなよ」
ゲルマニアはあきれながらそう言うと、両手に持っていた箱を、シャルルとマリアンヌの目の前に置いた。
「おまえらの服が入っていた。ここは無人島なんだから、もう元の服に着替えたらどうだ?」
「暑いですから、今の服でまだいいですわ」
マリアンヌが、今のみずぼらしい服でいいと言ったので、シャルルも元の服に着替えることを遠慮した……。
「助かったのはぼくたちだけなのか?」
シャルルがゲルマニアに尋ねた。船の残骸と見られる物は砂浜に漂着していたが、自分たち以外の人の姿は見えなかった……。
「死体は流れついたが、生きて流れついたのは、私達だけだろう。たまたま近くに大きな木の板が浮かんでいてな。それに掴まっていると、今朝になって、この島に流れついたというわけだ」
「……そうか」
「また私のせいで、たくさんの人が死んでしまいました……」
マリアンヌは、船員などの大勢の人々が死んでしまったことに、心を痛めている様子だった……。たとえ、この戦争を終わらせることができたとしても、彼女は、自分のせいで死んだ者たちのことを一生忘れないことだろう……。
「いや、クルップは私の元部下なのだから、私のせいだ」
おそらく、彼女も一生忘れないことだろう……。


 マリアンヌとゲルマニアが感傷に浸っていたころ、ウィリアムとメアリーは、ヤシの木になっているココナッツを手に入れようとしていた。
「メアリー、木に登って傾けろ」
「わかりました」
ウィリアムは、メアリーにヤシの木に登らせ、木が傾いたところで、ココナッツをもぎ取る考えらしい。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん