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愛憎渦巻く世界にて

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「ただちに捜索の船を送るべきだ」
皇帝が急かす。しかし、列席者たちは、どうしたものかという様子のままだ。
「船の数に余裕がありません。あのあたりの海流は複雑ですから広い範囲を探す必要があるわけですが、海賊に襲われる危険性があるので、単独で航行させるわけにはいかないのです」
海洋担当の大臣が申しわけなさそうに言う。すると、皇帝は、テーブルの上にある地図をじっくり見ながら考え、
「あの子たちがいるのはこの辺りだ」
トラアン島を指さして言った。会議の出席者の何人かが顔を見合わせる。
「どうしてわかるのですか?」
大臣がおそるおそる問いかけたが、その答えは隣りにいた将軍が耳打ちで答えた。どうやら皇帝は、あの海域のことをよく知っているようだ……。
「トラアン島を中心に捜索しろ。確か、それほど遠くない海域をフリゲートという船がいなかったか?」
フリゲートという船とは、ガレオン船よりも強い船であった。たくさんの大砲による火力が大きな魅力で、この世界では一番強い船であることは間違いない。
「フリゲートはまだ試験航行中です」
フリゲートはトラアン島からそう離れてはいない海域を航行していたのだが、試験航行中であった。
「試験航行の一環とすれば良い。それに、船長は勇敢な男らしいじゃないか」
「お言葉ですが、皇帝。これは、ただの賭けではありませんか? もしかしたら、もう違う海域まで流されてしまっているかもしれませんよ」
大臣は堂々とそう言った。捜索を集中させるのはハイリスクだからだ。
「そうだ、これは賭けだ。だが、この世には、運次第ということがよくあるではないか?」
皇帝が真剣な口調でそう言ったので、大臣は渋々だが納得してくれた。さっそく、航行中のフリゲートに、伝書鳩で連絡することにした。

「ブリタニア様!!!」

 突然の大声に、ブリタニアは驚いた……。皇帝たちも驚いていたが、その視線は大声を出した本人である執事に向いていた。執事の大声だということを即座に理解したブリタニアは、全速力で会議室から離れていった。彼女の後を専属メイドが追いかけ始めたときドアが開き、執事が会議室から飛び出してきた。
「まったく!」
走り去っていくブリタニアと専属メイドを見届けている執事がつぶやいた。
「懐かしいな」
皇帝が会議室から顔を出し、元気いっぱいに走っていくブリタニアを見て言う……。

 執事は、子供の頃の皇帝を思い出すと、ため息をついた……。

作品名:愛憎渦巻く世界にて 作家名:やまさん