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毒虫少女さみだれ/私に汚い言葉を言って

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 そんな他愛もないことを確かめて、五月雨は一人悦に入っていた。
 結局何をどうしてみたところで、現実から逃げられたものではないのだ。折り合いを付けるか、膝を屈するか、逃げ出すか──選択肢は無数にあり、どれを選んだところで正誤の確認もできはしない。
 つまりは、生きていくしかないということになるのだろう。気付いてしまえば当然の結論に至る──そんなことすらわかっていなかったのだから、つくづく自分が馬鹿だったということだ。
 全てはきっかけでしかない。義輝との出会いも、最近急増した入居者も、祖父が最近疎遠になりがちなことすら、格別な思いを抱く程のものではない。他人事のような寂しさを噛み締めながらも認める。自分が関知できる範囲以外のものに意味を求めたところできりがない──肩から落ちかけたジャケットを羽織り直し、五月雨はひっそりと決意していた。
 全てはきっかけだ。ならば、与えられたきっかけを活かすぐらいの頭は働かせてもいい。どうやら弟の姿を見つけたらしい義輝に別れの挨拶をし、喧噪の真ん中を突っ切って寺から出る。道路は新たな参拝客達を乗せた車で渋滞していたが、徒歩移動の自分には関係のない景色だった。もうすっかり最古参になってしまった、馴染みのアパートに向けて足を進める。
 ──伊皆さん達は、
 まだあの居間で炬燵に潜っているのだろうか。
 土産の一つでも買っていった方が良いのかもしれない。
 ──土産話でも、用意しておきましょうか。
「……僕らしく、現地調達ということで」

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