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CROSS 第15話 『せめぎあい』

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   ガッ!!!

 少佐がそう叫んだ次の瞬間、少佐の胸ぐらを妖夢が片手でつかん
でいた。もう片方の手には刀があった。
 少佐は思いきりビックリしていた。ものすごい速さだったからだ。
少佐の御自慢の『コンピューターアイ』でも、ちゃんと動きを捉え
られなかった……。
「いいか? いつまでも、おまえみたいな奴に構ってはいられない
 んだ。おまえはおとなしく公聴会に出て、自分がやったことを洗
 いざらい言えばいいんだ。それでさっさと死刑になってしまえ」
妖夢の口調は、控えめなものからドスが聞いた恐ろしいものに変わ
っていた……。作者のようなチキンが聞いたら、小便を漏らしてし
まうレベルだった……。しかし、この手の口調になれている少佐は
じっと妖夢を見ていた。こういうことは、先に怖じ気ついたほうが
負けなのだ。黙ったままの少佐に構わず、妖夢は言葉を続ける。
「だいたい、わが国はやろうと思えば、おまえら帝国連邦を潰すこ
 とぐらいできるんだぞ?」
少佐はそこでわざとらしく噴き出した。
「……異次元戦闘機一つ作れないのにか? それに、そちらのお国
 の兵器は、旧式兵器ばかりじゃないか!!! 魔力だけでいつま
 でも科学力に太刀打ちできると思うな!!! それに、帝国連邦
 軍には、オレのように魔術を使える奴がいくらでもいるぞ!!!」
少佐も負けずに言い返す。
 妖夢はそこで息をゆっくりと吐き、気持ちを落ち着かせていた。
「……そこまで言うなら、いいものを見せて上げます」
妖夢はそう言うと、少佐を取り押さえている霊魂に合図を送った。
 その途端、少佐は霊魂に無理やり立ち上がらせられ、操られて歩
き始めた……。まるで、操り人形のようだった……。
「…………」
少佐は黙っていることにした。



 そのころ、CROSSの特務艦では大騒ぎになっていた。なにせ、
自分たちのリーダーである少佐がいきなり連れ去られたのだ。
 ヘーゲルたちは、隊員たちを落ち着かせると、進行し始めた少佐
を乗せた艦を追いかけ始めた。航行の最中に何度も、その艦に呼び
かけたが、返答は無かった……。間違いなく、無視されていた……。
 佐世保はすぐに少佐の救出作戦をやろうと言い出したが、ヘーゲ
ルは押し止め、紅魔館に急いで連絡した。直通電話ができるのは少
佐が持っている専用バッジだけなので、紅魔館のレミリア・スカー
レットまで通信をつなげるのには、時間を喰った。レミリアは、引
続きを後を追えと言った。佐世保が救出作戦をやりたいと申し出た
が、それは危険過ぎるからやめろと言われた……。

 なぜなら、少佐が乗せられているのは、幻想共和国軍一の空母で
ある『白鯨』なのだ。あの『白鯨』という小説に出てくる白い鯨の
ような強さを持っている艦だった。この特務艦なんて、あっという
間に撃沈されるだろう。幸い、大日本帝国連邦軍に被害は無いが、
停船させようとしてきたザフト艦を体当たりで撃沈したという。
 そんな恐ろしい艦に少佐は拘束されているのだ……。