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司令官は名古屋嬢 第4話 『やっかいな存在』

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第2章 一石三鳥のプロジェクト



【時間軸】 … 異次元暦42735年 2月2日 朝
【場所】 … 758号世界
       福島県 『CROSS第一核兵器工場』(旧福島第一原発)付近の上空


   それから数日後……。

 守山は輸送機に乗っていた。簡素な座席に座った彼女は、無言で
窓の外を見ていた。他の乗客の姿はなかった。輸送機は、6つの特
殊ジェットエンジンがついた超大型の『アント』というものだった。
エンジンの角度が変えられるようで、垂直離着陸が可能になってい
た。
 機内後部に積んである特殊なビニールで覆われた荷物は、水や
食糧のようで、全て中部地方産の物だった……。
「……やっぱり、辞表出して辞めればよかったかな?」
守山はそう呟くと、深くため息をついた……。
 大須から例の転属命令を聞いたとき、守山はタチの悪い冗談かと
思った。しかし、冗談ではないことがわかると、彼女は辞表を出し
てもいいかと大須に尋ねた。大須はそれでも構わないと言ってくれ
た。しかし、守山はその転属命令を受けることにした。
 彼女は、白鳥をバレないように殺せたことを不幸中の幸いだと思
って、自分を慰めることにした。ほとぼりを冷ますにはちょうどい
い転属かもしれない。

「守山少尉!」

 その声に守山は、視線を前に移した。そこには、一人の兵士がレ
インコートみたいな物を持っていた。
「なに?」
守山はめんどくさそうに返答した。
「……この放射線防護服を着てください。もうすぐ到着ですので」
兵士は、水色の放射線防護服を守山に渡した。
「今着ている服の上から着てください。付属の線量計はオンにしておいてください」
「はいはい」
守山はそう言うと、さっそく防護服を身にまとった。新品らしく、
変なにおいはしなかった。次に守山は、線量計をオンにした。ここ
は密閉された機内のため、無反応だった。
「その線量計が鳴り始めたら、すぐに退避所まで逃げてください。
 まあ、めったにないことですが」
兵士はそう言うと、自分も防護服を着始めた。
「……やれやれだわ」

 守山を乗せた輸送機は、頑丈なフェンスで囲まれた境の上を通り
過ぎた。そのフェンスの看板には、『放射線管理地域につき、異次
元暦42757年(西暦2041年)3月11日まで、関係者以外
立ち入り禁止 CROSS』と書かれていた……。

 やがて、輸送機の前方に、8年近く前、嫌というほどテレビで観
た建造物が見えてきた……。