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NIGHT PHANTASM

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03.マーダー・ライセンス(2/3)



ある程度の安定を手に入れたところで、ティエは二人それぞれの成長方針を違うものにした。
姉であるルイーゼは倭刀を好むのもあり、力に重点を置いた。素早さは特筆するものでもないが、一撃の重みを優先する。
歳相応とは言えないほどの冷静さと聡明さを持ち合わせていたため、猪のようにはならないだろう。心配なのは倭刀を振るい続けることによる疲弊である。
最終的に彼女は、剣の舞を思わせる美しい立ち回りを手に入れた。

妹のアンナが一番最初に才能の芽を見せたのは、投擲や遠距離を射程とする類のものだった。
今でもアンナは、コートに隠され見えない位置にいくつもの投擲ナイフを装備している。ジルベールが用意した銃にも興味を見せ、彼女に多少の知識と訓練を叩き込まれた。
頑固なことに、アンナは何があってもオートマチックを手にすることがなく、リボルバーを好んだ。
だが、銃の実訓練は音が問題になる。吸血鬼の能力をもってしても、よからぬ面倒ごとが音と異変をかぎつける可能性があったために、長くの練習をティエは許さなかった。
ジルベールに教わった期間も、中身は濃いが時間としてはごく短いものだ。
最終的に、得物は大型の殺傷向きナイフに決まった。片手で扱える程度に筋肉をつけたものの、スピードと柔軟性に重点を置いて鍛えたために服に覆われればそのたくましさはうかがいしれない。
単純に武器と技だけを見るならば、ティエの技術を継承したのはルイーゼではなくアンナといえるだろう。


しかし、そんな訓練もあくまで『自衛』のためであり、殺し屋稼業をさせようなどとは思考のすみにもなかった。
殺さなければ殺される、そんな状況もある。異端者である吸血鬼についているのだ、そのために形だけは確かに『殺し』の術も教えた。
動きを止めたり、意識を落としても人間はまた立ち上がる。そんな事態に追い込まれれば、増援を絶やすために殺して口を封じるほかに道はない。
だが、一番にはやはり自己防衛だ。ジルベールはやりすぎだという顔をしていたが、ティエは気にする様子もなかった。
そう、あの日までは。


「そんな……何も、殺さなくても……」
「……?」
それは、何年前だっただろう。雷鳴が屋敷を震わせる、嵐の夜だった。まるで、双子とティエが出会ったあの夜に――そう、よく似ていた。
まるで何かを告げるかのように、同調を見せた夜。
館のエントランスで、大量の返り血を浴びて立っている二人と、床に伏せて動かない血まみれの肉塊を見たその瞬間、ティエは愕然とした。
再生が間に合わなくなるまで傷つけられた体。ばらされた四肢。飛び出た眼球、内臓。血の匂いで、それは人間ではなく吸血鬼だと――悲しきかな、同族であるティエはすぐに気付いてしまう。
不思議そうに揃って自分を見つめる、二人の視線がティエにとっては怖くてたまらなかった。
自分が、そう育てた。
自分が、二人をそんな道へ突き落とした。

それが、たまたま迷い込んでしまった運の悪い人間であればまだよかった。
しかし、不運は続く。それは、吸血鬼ハンターが集う組織の中でもひときわ大規模な『ナハティガル』の使いの者だったのだ。
何故吸血鬼が組しているのかはわからないが、おそらく双子を拾い上げたあの晩、事後処理をしていなかったことに目をつけられ以降マークされていたのだろう。
敵意も、殺意も何もなく、ただ意をうかがうために訪れただけの吸血鬼。ティエが話せば、そこで誤解は解かれ、事がこじれることはなかっただろう。
だが、殺してしまった今となっては何も言い訳できない。
ティエは、組織を敵に回してしまったのだった。

思い返す。
何故、二人に武器を渡してしまったのかと。
拾い上げて数年になるが、毎夜ティエは二人に薬物投与を行っていた。心がショックで壊れてしまわないように、そして自分の血を少量混ぜることで病気などに負けず面倒ごとが減る体質になるように。そんな行為を行っているうち、ある時二人は薬の副作用を話してくれた。
「夢を……見る?」
「はい。現実なのか、夢なのかわからないくらい鮮やかで、とても幸せな気分になります。そして、それが……とても大切なことを、伝えている気がする」
「忘れたくないの。マスター、これはいけないこと? もっと夢が見たいの。もっと薬を頂戴」
「……」
ティエは、思案した。双子はまだ幼い。ナハティガルの警戒を受けている今、使いの者が来ればまだ平和的だが、突然潰しにかかってくる可能性もある。
仲間は多いほうがいい。守るものは少ないほうがいい。巻き込みたくないが、そう決断したゆえに戦う術を知らぬ二人が死んでしまったら――。
「戻りたい?」
「え?」
「その幸せな夢に、浸りたい? 辛い夢より、幸せな現実を見たい?」
発言を繰り返すたびに、押し寄せる精神的な痛み。
違う。こんなものを持たせて、こんな事をさせるために自分は二人の命を救ったわけじゃない。だが、このままでは最悪の展開も在り得る。
葛藤しながら、ティエは自分用のストックとして保管していたナイフを二人の前に差し出した。
「それならば、手に入れなさい。取り戻すのよ……障害になるものは、潰して」


作品名:NIGHT PHANTASM 作家名:桜沢 小鈴