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キジン×ヘンジン×サツジン

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 篭城を始めてしばらくは、暗惨とした空気が漂い、まるで通間さんのお通夜か葬儀をしているようであった。
 実際、その面は少なからずあるのだろう。
 夕食の間、その空気は維持され続け、夜の九時を回った。
 お風呂にも入り、空白の時間ができる。
 だから、
「こんな風にいつまでも暗いのもなんですし、気晴らしにトランプでもやりませんか?」
 そう言った。
 何人かにはジト目、あるいは睨み付けられたりもしたが、
「良いですね! ネネもこういうのは苦手なので、もっとパァーっとしてるほうが良いです!」
「わたしもやりたいです。さっきはできなかったですし、その……」
 後半ごにょごにょと聞き取れなかったが、賛同はしてくれた。
 ちなみに、男性陣は仕使さん、四方八さんが気を使ってくれたのか、一緒にやってくれるようだ。
 地方ルールなどの多い大貧民(大富豪ともいう)は避け、ババ抜きをする。
 ディーラーは、言いだしっぺの僕が行うことになった。
 カードをよく切り、配る。
 自分の手札を見ると、ジョーカーがあった。
 ぐるぐると、席順で決めた順番でカードを引き合う。
 結局、誰もジョーカーを引いてくれず負け。
 その後も、ババ抜きを続け、僕の戦績は一位一回、二位三回、三位二回、四位一回だった。
 さすがに七回もババ抜きをしていると夜も更け、日付を跨ぐ直前になる。
 すると、優里さんが立ち上がり、薬師さんに話しかけた。
 部屋が静かなため、耳に入ってくる言葉の断片から察するに、包帯を換えて欲しいようだ。
 薬師さんが僕に、
「少々、部屋を出るよ。もしかしたら私は帰ってこないかもしれないが、部屋に帰ったと考えてくれ。一応、その際には優里くんに言伝を頼むつもりだが、一応な」
「わかりました。おやすみなさい」
 二人が部屋を後にする。
 さて、仕切りなおして八回目になるババ抜きを始めようとすると、館全体を震わすような、大音響が鳴り響いた。
 ゴーン、ゴーンという鈍く、重厚な調べは、鐘の音だ。
 どうやらこの館の時計は近所迷惑なほどの音量で鳴るらしい。
 長い残響をし、音が消えた。
「すごい音だったですね。ネネこんなの初めて聞きましたですよ」
 目をまん丸にして言う。
 それに対し、優希さんが、
「これ、お昼も鳴ってたのよ。仕使さんに訊いたら、夜も鳴るって言われたから知っていたけど、それでも心臓に悪いわね」
「確かに。今、鐘のことを知りましたけど、明日のお昼には同じように驚いていそうですね」
 八回目のババ抜きが終わるころには、優里さんは帰っていた。
 ババ抜きは十回目まで続き、キリがいいということで、そこで終わることにした。
 時計を見ると、午前一時を回っている。
 誰か一人が必ず起きているようにローテーションを組み、一人、また一人と眠りにつく。