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お下げ髪の少女 後半

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「師匠の小説とは比較にもなりませんが、僕もときどき、自己満足の絵を描くだけでいいんです。地味に生きて行くことが性に合っていると思っています」
「ください。この絵、わたしにください」
美緒がそう云ったとき、彼女はまだ泣いていた。
「馬鹿云え。俺がもらったんだ。いくら可愛い娘でもそれは駄目だ」
「じゃあ、今度また描くので、それを美緒さんにプレゼントさせてください」
「いつですか?早く新しい絵を見たいです」
「夜のアルバイトもありますからね、いつという約束はできません」
「昼も夜も働くんですか?身体こわしませんか?」
「きつい仕事ではないので、大丈夫だと思います」
「若いうちの苦労は買ってでもしろ、って云うじゃねえか。見かけによらずいい根性だ」
そのとき、美緒が爆弾発言をした。
「ねえ、お父さん。今から緒方さんと散歩行っていい?」
「なんだって!今はもう、九時だぞ。あとかたずけしたら、美緒、家に帰ろう。緒方君、今夜はありがとうよ」
「お父さん。なんか、急に意地悪になったね」
美緒は慌てた様子で立ち上がった。
「師匠と美緒さん。駅まで一緒に行きましょう」
緒方も座卓の上の食器などをかたずけ始めた。幸福だった。美緒が近くに居るときは、いつも、幸福だった。