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お下げ髪の少女 後半

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「すみません。生意気なことを云いました。じゃあ、お詫びのしるしに、師匠にプレゼントさせてください」
「何かくれるってえのか。何を持って来た」
 緒方は部屋の片隅に立てかけてあった段ボール箱を開け、中の物をその場に置いた。
「なかなかの油絵だな。初月給で買ってきてくれたのか。でも、お前の給料で買えるような安物じゃないぜ、これは」
美緒の父は驚いた顔で云った。緒方は嬉しかった。
「額は安物じゃないんですけど、絵は自前ですから……」
小説家は座ったまま背伸びをするような様子で、緒方が描いた安曇野の風景を改めて凝視めた。
「……半端じゃねえな。こりゃあ、たいしたもんだ。なんで隠してたんだ」
「隠していたわけではないんですが……」
「素人の絵じゃねえぞ。お前がこんな絵を描く奴だとは思わなかった」
遠景の残雪の美しい山脈が、手前の木立に囲まれた農家のたたずまいと、それらの影を宿す水田とを引き立てていた。
 気がつくと、美緒が泣いていた。頬を大量の涙が伝っておちている。
 緒方は感動していた。まさかと思った。
「凄いです。絵というものが、こんなに感動させてくれるなんて……」
「僕も、嬉しいです。美緒さんの、そんなに感動できる心に敬服しています」
「どうするんだ。こんな絵を描ける奴が、どうしてただの工員になったんだ」